洋上風力発電の設置海域をEEZまで拡大—改正再エネ海域利用法が成立

洋上風力発電の設置海域をEEZまで拡大

改正再生可能エネルギー海域利用法の成立とその背景

改正再生可能エネルギー海域利用法が2024年7月3日の衆院本会議で成立し、従来は領海内に限られていた洋上風力発電施設の設置範囲が、排他的経済水域(EEZ)まで拡大されることとなりました。これにより、設置海域の拡大を通じて国内の洋上風力発電導入が大幅に進む見込みです。

EEZの定義と浮体式風力発電の可能性

EEZとは各国が経済的権利を行使できる沿岸から200カイリ(約370km)の海域を指します。これまで領海内では、浅い水深で海底に基礎を固定する着床式が主流でしたが、EEZでは水深がより深いため、海面に浮かべる浮体式風力発電の活用が中心となります。浮体式は深海域でも設置可能なため、安定した風況を活用しつつ発電量を増加させることが期待されます。

募集区域の指定と地元協議の流れ

改正法では、政府が自然条件や環境影響などを総合的に勘案し、適切な海域を「募集区域」として指定します。事業者はまず実施計画を政府に提出し、その後、漁業者や沿岸住民などの地元関係者からなる協議会で計画内容を議論します。地元の理解が得られた段階で、国土交通大臣および経済産業大臣が許可を行う仕組みです。

2040年度のエネルギー基本計画と風力発電比率

政府は2024年2月に閣議決定したエネルギー基本計画において、2040年度の電源構成に占める風力発電比率を、現状の1%から4〜8%程度に引き上げる目標を掲げています。今回の改正法は、洋上風力発電の設置可能海域をEEZまで広げることで、海域利用の余地を拡大し再生可能エネルギーの利用促進を図る取り組みの一環と位置づけられます。

浮体式風力発電の導入拡大に向けた期待

浮体式風力発電は、深海域でも設置できるため、陸上風力や着床式が難しい海域での発電を可能にします。EEZ内には強風が期待できるエリアが多く存在するため、浮体式導入によって発電効率が向上し、安定的な電力供給が見込まれます。また、洋上風力設備の建設・保守において新たな技術需要が生まれ、関連産業の雇用拡大や地域経済の活性化にも寄与すると期待されています。

地元理解と環境配慮がカギとなるプロセス

事業者は協議会を通じて、漁業権や漁場利用への影響を調整しながら進める必要があります。環境アセスメントでは、海洋生態系への影響や鳥類の生態を踏まえた適切な対策を検討し、持続可能な事業運営を目指すことが不可欠です。地元の合意形成をどのように図るかが、事業成功の最大のカギとなります。

国内外の事例と今後の市場動向

欧州では既に北海やバルト海で数多くの浮体式風力発電が稼働しており、技術的成熟度が向上しています。日本でも、洋上風力の商業運転が実証段階を終えつつあり、EEZ拡大後は同様の事業モデルが期待されます。民間企業の参入や、再生可能エネルギー発電事業への投資が一層活発化し、市場規模の拡大が見込まれます。また、関連技術の研究開発やサプライチェーン構築により、国内の産業競争力が強化されることも期待されます。

政府の支援策と法整備の今後

政府は、再生可能エネルギー海域利用法の改正に続き、インフラ整備支援や税制優遇などの支援策を検討しています。海域利用に関する許認可手続きの円滑化や、小型浮体式の実証実験支援などが想定され、事業リスクを低減する環境整備が進む見込みです。今後も法制度や技術標準の整備が継続的に行われることで、洋上風力発電市場の拡大がさらに加速すると考えられます。

ぜひシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする