日本政府が地方にギガワット級データセンター集積を目指す理由

現在、日本のデータセンター(DC)は首都圏と関西圏に集中しており、両地域で面積換算約90%を占めています。政府は2030年代を視野に、地方に複数のギガワット級DCクラスターを整備する方針を表明しました。その背景には、地域経済活性化や防災観点、通信と電力インフラ効率化への期待があります。

ワット・ビット連携による効率的なインフラ整備

総務省と経済産業省の官民懇談会では、**電力(ワット)と通信(ビット)インフラを同一地点で整備する「ワット・ビット連携」**が議論の中心に据えられました。従来、整備は企業個別に進められていましたが、AI需要の拡大を受けた地方DC整備には、官民の横断的協力が必要との結論に至っています。

再エネ電源周辺でのDC立地戦略

日本は、すでに地方に多くの脱炭素電源(再生可能エネルギーや原子力)を有しており、それらの近くにDCを集めることで、インフラ整備と電力活用の効率化が可能です。加えて、通信遅延の低減を目的とした「オール光ネットワーク(APN)」の基盤整備も進む見通しです。

データセンター普及と電力需要の動向

AI導入による電力需要の増加予測

生成AIと半導体産業の進展により、電力広域運営推進機関(OCCTO)は、2034年度にはDC・半導体工場によって715万kWの電力需要増が見込まれると発表しています。つまり、電力・通信・AI用デジタルインフラを統合的に整備する必要が高まっています。

地方DC整備の短・中長期アプローチ

短期では、「ウェルカムゾーンマップ」を活用し、早期電力供給可能な地域への誘導を推進。長期では、通信・電力を一体化して整備することで、地方分散による防災強化や地域創生、AI推論ニーズへの対応を目指します。

日本が進めるDCの脱炭素・分散強化戦略

地方へのAI・DC分散配置がもたらす効果

地方にDCを分散配置することで、災害リスクの低減や地域経済のデジタル化推進、人材育成(大学・地元企業との連携)など、多方面のメリットが見込まれています。

再エネ比率と国策の調和

政府の第7次エネルギー基本計画では、再エネ比率を現在の約20%から2040年には**40〜50%**に引き上げる目標を掲げています。これにより、DC周辺での再エネ活用環境が整うことで、クリーンなAIインフラ構築の実現性が高まります

地方DC整備を政策支援へ

2024年12月のGX2040ビジョンや同懇談会では、「脱炭素電源近傍でのDC立地誘導」が明記され、官民による具体策の議論・制度整備が進行中です。電力・通信需要の変化に対応しつつ、インフラ強化と地域活性化を両立する施策として注目されています。

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