2025年3月5日、帝人株式会社はリサイクル材やバイオマス原料を活用した新たな炭素繊維製品ブランド「Tenax Next(テナックス ネクスト)」を正式に立ち上げ、第一弾として炭素繊維フィラメント糸および短繊維製品の2ラインを発売すると発表しました。これら新製品は、従来の炭素繊維製品と同等以上の強度・耐久性を維持しながら、製造時のCO₂排出量削減や原料調達の環境負荷低減を実現しています。
ブランドコンセプトと市場背景
「Tenax Next」は、「次世代の素材」を意味し、地球温暖化対策や循環型社会の実現に寄与する炭素繊維製品のシリーズです。炭素繊維は軽量かつ高強度な特性から航空宇宙、自動車、スポーツ用品など幅広い用途で普及していますが、従来は原料の石油化学製品依存度が高く、ライフサイクル全体でのCO₂排出抑制が喫緊の課題でした。環境及び経済性の両立を目指す市場ニーズを背景に、帝人は素材そのものから環境配慮を徹底した新ブランドを立ち上げました。
Tenax Next HTS45 E23 24K:高性能フィラメント糸
- 原料・製造プロセス
バイオマス由来原料や再生可能原料をマスバランス方式で配合し、ISCC PLUS認証を取得した環境配慮型ポリマーを用いて製糸。製造プロセスのエネルギー効率改善や再生可能エネルギー利用拡大により、従来比で約35%のCO₂排出量削減を達成しました。 - 材料特性
24,000本のフィラメントから成る「24K」仕様により、優れた引張強度(約4,000MPa)と剛性(約230GPa)を保持。航空機や自動車部品の認定規格にも対応可能な安定した品質が特徴です。 - 適用例
高負荷部材や複合材料強化用途に適し、自動車シャーシ補強材や産業用ロボットのアーム部品など、厳しい強度要求を伴う用途での採用が見込まれます。
Tenax Next R2S 513 6mm:リサイクル短繊維
- リサイクル素材の活用
炭素繊維製造過程で発生する端材を回収し、再成形・再加工した短繊維製品。原料廃棄を大幅に削減しつつ、繊維長6mmの均質な形状と50µmの繊維径を実現。 - 多用途に対応
複合樹脂への添加による機械的強度向上、3Dプリント材料への混合による軽量化、高機能断熱材やスポーツ用品への補強材利用など、幅広い用途への適用が可能です。 - トレーサビリティとデジタル証明
「デジタルプロダクトパスポート」に対応し、QRコードから原料調達、製造工程、CO₂排出量削減量などの詳細情報を確認できます。これにより、サプライチェーン上の企業は製品の環境付加価値を証明可能です。
サステナビリティへの取り組み
帝人グループは、炭素繊維のライフサイクル全体で温室効果ガス排出を抑制するため、リサイクル技術やバイオ由来樹脂の導入、製造プロセスの省エネ・再エネ化を推進しています。「Tenax Next」はこうした取り組みの集大成であり、2030年までに炭素繊維事業全体でのCO₂排出量を50%削減する中期環境目標※の一翼を担う製品群です。
今後の製品拡充と市場展開
帝人は「Tenax Next」ブランドの拡充を図り、今後も製品ラインナップを増強予定です。具体的には、より高強度タイプのフィラメント糸や異形断面ファイバー、オートクレーブ不要の樹脂 impregnated プリプレグなど、成形工程でのCO₂排出を抑制する複合材料用中間材を開発中です。また、欧州市場を皮切りに、自動車・風力ブレード・ドローン等の各分野での採用を加速し、グローバルなサステナビリティソリューションを提供していく計画です。
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