2025年3月5日、東芝デバイス&ストレージ(本社:川崎市)は、兵庫県太子町の姫路工場に整備していた車載用パワー半導体の後工程専用新製造棟が完成したと発表しました。既存棟と合わせることで、2022年度比で後工程の生産能力を2倍以上へ拡大する見込みです。
姫路工場の歴史と今回の投資背景
姫路工場は1982年4月に設立され、パワー半導体や小信号デバイスなどのディスクリート半導体を一貫生産してきました。特に自動車の電動化や産業機器の自動化に不可欠な低耐圧MOSFETの需要が近年急増する中、東芝D&Sは2022年12月に後工程棟の建設を発表。国内外で高まる車載向けパワー半導体の供給競争に対応し、安定した量産体制を整備しています。
新製造棟の設備概要と機能強化
新製造棟は地上2階建ての鉄骨造で、建築面積約4,760㎡、延床面積約9,389㎡。後工程とは、シート成形、ダイシング、ワイヤボンディング、パッケージングなど、ウェハから完成品へ仕上げる工場ラインを指します。
- 自動搬送システム:全工程を無人搬送し、作業者の省人化と歩留まり向上を同時に実現
- RFID管理:部材・製品をリアルタイムで追跡し、在庫管理精度を数倍に高める
- クリーンルーム:微粒子管理と温湿度制御を強化し、歩留まり率を1%以上改善可能
これらのスマートファクトリー化施策により、従来比で生産効率を20%以上向上させる計画です。
再エネ完全供給とCO₂排出削減策
東芝D&Sは環境目標の一環として、姫路新棟の稼働電力を100%再生可能エネルギーで賄います。
- オンサイトPPA導入:屋上に太陽光パネルを設置し、オンサイトPPA※契約を締結。初年度は約500MWhの発電見込み
- 再エネ電力調達:施設全体の電力契約を再エネ由来へ切り替え、CO₂排出量を年間1,200トン以上削減予定
※PPA:Power Purchase Agreement(電力販売契約)
国内外での製造投資とのシナジー
東芝D&S子会社の加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)では、2024年5月に300mmウェハ対応パワー半導体前工程新棟を稼働。これと今回の後工程新棟の投資によって、前後工程を横断的に最適化し、量産ライン全体でのスループットを年率30%向上させる見込みです。これにより、自動車製造業や電力インフラ向けの高効率製品を安定的に供給し、グローバル市場での競争力を強化します。
出荷開始までのロードマップ
- 2025年度上期:後工程新棟の装置搬入完了、設備調整・認証テストを実施
- 2025年度下期:部分稼働開始、試作ユニットの品質検証
- 2026年度:量産ラインのフル稼働開始、国内外顧客向け本格出荷
- 2027年度以降:増設フェーズ2で追加ラインを構築し、さらなる生産能力強化
コメント