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東京都足立区が進めるSDGsの取り組み:地域と共に創る持続可能な未来

更新: 2025/04/13
現地レポート
東京都足立区が進めるSDGsの取り組み:地域と共に創る持続可能な未来

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東京23区の一つである足立区では、SDGs(持続可能な開発目標)を地域の課題解決と結びつけた様々な取り組みが進められています。環境問題から子どもの貧困対策、地域活性化まで、足立区は独自の視点でSDGsの実現に向けた政策を展開しています。以下では、足立区のSDGs推進計画や具体的な取り組み事例を紹介し、地方自治体がどのようにグローバルな目標に貢献できるかを探ります。

足立区のSDGs推進方針と基本計画

メリット

  • 2030年度までに区内温室効果ガス排出量を2013年度比40%削減する目標を掲げ、2021年度末時点で区有施設の太陽光発電合計出力が約1,400kWに達し、区内全小中学校への1人1台タブレット配備でデジタル格差解消も実現している
  • 2021年開始の「足立区SDGsパートナーシップ制度」で令和5年度に100団体以上が登録し、毎年10月の「あだちSDGsウィーク」と合わせてSDGs推進が地域全体の実践として定着しつつある
  • 2015年開設の「子ども支援センターげんき」と学習支援事業「未来へのまなびや」が、都内でも高い水準にある子どもの貧困率に正面から取り組む行政主導の先進モデルとして評価されている

デメリット・注意点

  • 2013年度比40%削減目標に向けて区有施設の太陽光出力は1,400kW(2021年度末)を達成したが、区内全体の民間建物・工場を含む面的なCO₂削減は行政の直接統制外で、目標達成には民間事業者の自主的な取り組みへの依存が大きい
  • SDGsパートナーシップ制度の100団体以上への拡大は成果である一方、登録団体の活動実績・貢献度の客観的な評価と「名前だけ登録」となっている団体への対応が課題として指摘されている
  • 子どもの貧困対策・高齢者支援・防災まちづくりなど重点5課題への資源集中は、他のSDGs目標(特にジェンダー平等・生物多様性・気候変動対策)への施策が相対的に薄くなるトレードオフが生じやすい

足立区は、2018年に策定された「足立区基本計画(2018〜2027年度)」の中で、SDGsの理念を積極的に取り入れています。この計画では「協創力でつくる『ひと』と『まち』の未来」というビジョンを掲げ、区民、地域団体、企業、行政が連携して持続可能なまちづくりを進めていくことを目指しています。

この記事のポイント
  • 東京都足立区が「地域と共に創る」をコンセプトにSDGs推進体制を構築した背景と経緯を解説
  • 貧困・子どもの教育格差をSDGsの視点で捉え、行政・NPO・企業が連携する取り組みを紹介
  • 環境・社会・経済の三側面を区の各部署が横断的に担う足立区モデルの特徴を考察

SDGs推進体制

2019年には、区役所内に「SDGs推進本部」を設置し、全庁的なSDGs推進体制を構築。2020年には「足立区SDGs推進指針」を策定し、区の政策とSDGsの17の目標との関連性を明確にしました。これにより、既存の区の施策がどのSDGs目標に貢献するのかを可視化し、効果的な推進を図っています。

優先的に取り組む5つの重点課題

足立区では、地域の特性を踏まえて以下の5つの課題を重点的に取り組むべき分野として設定しています:

  1. 子どもの貧困対策(SDG1、4、10)
  2. 高齢者の健康増進と支援(SDG3、11)
  3. 環境問題への取り組み(SDG7、13、15)
  4. 地域経済の活性化(SDG8、9、11)
  5. 防災・安全なまちづくり(SDG11、13)

これらの重点分野を中心に、具体的な施策が展開されています。

具体的な取り組み事例

足立区で実際に行われているSDGsの取り組みについて、分野別に見ていきましょう。

子どもの貧困対策と教育支援

足立区は、子どもの貧困率が都内でも高い水準にあることから、この問題に特に力を入れています。

「子ども支援センターげんき」の設置

足立区は2015年に「子ども支援センターげんき」を開設。子どもの貧困対策の拠点として、以下のような支援を行っています:

  • 学習支援事業「未来へのまなびや」の運営
  • 子ども食堂の支援・ネットワーク化
  • ひとり親家庭への総合的支援

教育クラウドの活用

ICTを活用した教育環境の整備も進めています。区内全小中学校に1人1台のタブレット端末を配備し、デジタル格差の解消と教育の質向上を目指しています。2020年度からは「あだちの学び支援サイト」を開設し、オンライン学習環境も充実させています。

環境問題への取り組み

足立区は、SDGsの環境関連目標達成に向けて様々な施策を展開しています。

足立区エコアクションプラン

2019年に策定された「足立区エコアクションプラン」では、以下の目標を掲げています:

  • 2030年度までに区内温室効果ガス排出量を2013年度比で40%削減
  • 再生可能エネルギーの利用促進
  • ごみの減量と資源化の推進

区有施設への太陽光発電システム導入

足立区では、区有施設への太陽光発電システムの導入を積極的に進めています。区役所本庁舎をはじめ、学校や体育館など多くの施設に設置され、2021年度末時点で合計出力は約1,400kWに達しています。

緑のカーテン推進事業

夏の省エネ対策として、公共施設や住宅でのゴーヤやアサガオなどによる「緑のカーテン」の設置を推進しています。区民向けの種の無料配布や、コンテストの開催などを通じて、区民参加型の取り組みとして定着しています。

高齢者の健康増進と支援

高齢化が進む足立区では、高齢者が健康で活躍できる社会づくりを推進しています。

あだち歩こう会

区内の各地域で「あだち歩こう会」を定期的に開催し、高齢者の健康づくりと社会参加を促進しています。この取り組みは、健康寿命の延伸(SDG3)とコミュニティ形成(SDG11)の両面に貢献しています。

シニア活躍応援プロジェクト

高齢者の就労や社会参加を支援する「シニア活躍応援プロジェクト」では、就労セミナーやボランティア活動のマッチングなどを行い、高齢者の能力や経験を地域社会に還元する機会を創出しています。

地域経済の活性化

足立区では、地域経済の活性化を通じて持続可能な発展を目指しています。

足立区産業活性化プログラム

2019年に策定された「足立区産業活性化プログラム」では、以下の取り組みを重点的に進めています:

  • 中小企業のデジタル化支援
  • 創業・事業承継支援
  • 産学官連携の促進
  • 地域資源を活かした観光振興

あだちSDGs経営推進事業

区内企業のSDGs経営を支援する「あだちSDGs経営推進事業」では、セミナーや個別コンサルティングを実施。地域企業のSDGs達成に向けた取り組みを促進するとともに、その取り組みを「あだちSDGs経営認証制度」として認証し、企業価値の向上を図っています。

防災・安全なまちづくり

災害に強く安全なまちづくりも、足立区のSDGs推進における重要テーマです。

防災街づくり推進地区の指定

災害に弱い木造住宅密集地域の改善を図るため、「防災街づくり推進地区」を指定し、不燃化建替え助成や道路拡幅整備などを進めています。

あだち安全・安心メール

災害情報や防犯情報をリアルタイムで配信する「あだち安全・安心メール」を運用し、区民の安全確保と防災意識の向上を図っています。

足立区の重点課題 関連するSDGs目標 主な取り組み例
子どもの貧困対策 1. 貧困をなくそう
4. 質の高い教育をみんなに
10. 人や国の不平等をなくそう
・子ども支援センターげんき
・学習支援事業「未来へのまなびや」
・子ども食堂支援
高齢者の健康増進と支援 3. すべての人に健康と福祉を
11. 住み続けられるまちづくりを
・あだち歩こう会
・シニア活躍応援プロジェクト
環境問題への取り組み 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
13. 気候変動に具体的な対策を
15. 陸の豊かさも守ろう
・足立区エコアクションプラン
・区有施設への太陽光発電導入
・緑のカーテン推進事業
地域経済の活性化 8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
11. 住み続けられるまちづくりを
・足立区産業活性化プログラム
・あだちSDGs経営推進事業
・創業・事業承継支援
防災・安全なまちづくり 11. 住み続けられるまちづくりを
13. 気候変動に具体的な対策を
・防災街づくり推進地区の指定
・あだち安全・安心メール

足立区エコアクションプランの主要指標と進捗

指標 基準年度・値 2030年度目標 具体的施策
区内温室効果ガス排出量削減率 2013年度(基準値) 2013年度比40%削減 省エネ設備導入支援・再エネ利用促進・区有施設のエネルギー管理強化
区有施設の太陽光発電設置出力 2021年度末 約1,400kW(区役所本庁舎・学校・体育館等) 設置施設数・出力の継続拡大 区有施設への太陽光発電システムの計画的導入・既存設備の更新推進
緑のカーテン推進参加世帯数 毎年度の種無料配布・コンテスト開催 区民参加型取組として定着・参加率向上 ゴーヤ・アサガオの種を無料配布・コンテスト開催で区民の省エネ意識醸成
SDGsパートナー登録団体数 2021年制度開始 令和5年度時点で100団体以上(継続拡大) あだちSDGsパートナーシップ制度の運営・パートナー間交流会・活動発信支援
子どもの学習支援参加者数 2015年「子ども支援センターげんき」開設 学習支援・子ども食堂支援の継続拡充 学習支援事業「未来へのまなびや」運営・ひとり親家庭への総合支援・子ども食堂ネットワーク化
区有施設ICT教育端末配備率 2020年度より区内全小中学校に1人1台タブレット配備 デジタル格差の解消・オンライン学習環境の充実維持 「あだちの学び支援サイト」運営・ICT活用教育の全校展開

足立区のSDGs推進における特徴的な取り組み

足立区のSDGs推進における特徴的な取り組みをいくつか紹介します。

SDGsパートナーシップ制度

2021年から始まった「足立区SDGsパートナーシップ制度」では、SDGsの達成に向けて主体的に取り組む企業や団体を「SDGsパートナー」として登録し、その活動を区が支援しています。パートナーは令和5年度時点で100団体以上に達し、様々な分野で活動しています。

区は、パートナー同士の交流会や、活動の発信支援などを行い、地域全体でのSDGs推進を図っています。

あだちSDGsウィーク

毎年10月には「あだちSDGsウィーク」を開催し、区内各所でSDGsに関連したイベントやワークショップを行っています。区民や企業、学校など様々な主体が参加するこのイベントは、SDGsの普及啓発と地域の取り組みの活性化に貢献しています。

「地域力」を活かした取り組み

足立区では、町会・自治会や商店街、NPO、学校など多様な地域主体の「地域力」を活かしたSDGs推進を重視しています。例えば、地域団体が主体となって行う「地域の居場所づくり」や「世代間交流」の活動を区が支援し、持続可能なコミュニティづくりを進めています。

足立区のSDGs推進における課題と今後の展望

足立区のSDGs推進には成果が見られる一方で、いくつかの課題も存在します。

現状の課題

  • SDGsの認知度向上:区民全体へのSDGsの浸透はまだ道半ばであり、特に若年層や高齢層への普及啓発が課題
  • 取り組みの「見える化」:様々な取り組みを行っていても、その成果や進捗を分かりやすく伝える工夫が必要
  • 多様なステークホルダーとの連携強化:さらなる企業や大学、NPOなどとの連携拡大が必要

今後の展望

足立区は2027年度までの基本計画に基づき、以下のような取り組みを強化していく方針を示しています:

  • デジタル技術を活用した区民サービスの向上
  • 地域資源や特性を活かした地域経済の活性化
  • 気候変動対策の強化と環境に配慮したまちづくり
  • 多様な主体によるパートナーシップの拡大

特に、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を踏まえ、子どもの貧困対策や高齢者支援など、社会的弱者へのサポートを引き続き重点的に進めていく計画です。

地域発のSDGs推進モデルとしての足立区

足立区のSDGs推進の取り組みは、地域の課題とグローバルな目標を結びつけ、「区政の主流化」として取り組んでいる点が特徴的です。子どもの貧困対策や環境問題など、区の重点課題に焦点を当てながらも、17のゴール全体を視野に入れた総合的な推進を図っています。

行政だけでなく、企業や地域団体、学校、区民など多様な主体との協働を重視している点も注目すべきです。SDGsパートナーシップ制度など、官民連携の仕組みづくりが進んでいます。

足立区の事例は、SDGsを「お題目」ではなく、実際の地域課題解決と結びつけて取り組むための参考になるでしょう。SDGsの「誰一人取り残さない」という理念を、地域レベルで実践する一つのモデルとして、今後も注目される取り組みです。

都市自治体がSDGsを地域に根付かせる3ステップ
  1. 1
    SDGs推進の旗振り役となる庁内横断チームを設置する

    各部署のSDGs担当者をつなぐ横断組織を設け、縦割りを超えた政策調整と情報共有を仕組み化する。

  2. 2
    住民の「身近な困りごと」をSDGsゴールに結びつける

    子育て・高齢者福祉・防災など住民が関心を持つテーマをSDGsと接続することで、取り組みへの参加意欲を高める。

  3. 3
    企業・大学・NPOとの協定でリソースを補完する

    自治体単独では補えない専門知識・資金・マンパワーを外部連携で確保し、持続可能な推進体制を維持する。

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カテゴリ:現地レポート