昨年1年間における世界の電力供給のうち、40.9%が化石燃料を燃やさない方式で発電された――これは、気候・エネルギー分野のシンクタンクEmberが2025年4月8日に発表した最新報告書の核心的なデータです。地球温暖化を促進する二酸化炭素排出量は過去最大を記録する一方で、太陽光や風力、水力といった再生可能エネルギー源の成長が電源構成の大きな転換を後押ししていることが浮き彫りになりました。
2024年のCO₂排出と需要増加の背景
2024年は記録的な猛暑に見舞われ、空調需要の急増が電力需要を前年から約4%押し上げました。これに伴い、化石燃料火力の稼働率が高まり、排出量は146億トン(過去最高)に達しました。石炭火力とガス火力が寄与した割合はそれぞれ約34%、22%です。猛暑と冷暖房需要の二重のプレッシャーが、クリーン電力拡大の勢いに一時的な“ノイズ”をもたらした格好です。
太陽光革命:過去3年で発電量2倍
再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電は圧倒的な成長速度を誇ります。2024年には、2012年比でソーラーパネル発電量が3年ごとに倍増するトレンドが持続。特に中国が世界の増加量の半分以上を占め、インドでも2023→2024年にかけて発電量がほぼ倍増しました。しかし、全体電源構成に占める太陽光の割合はわずか約7%にとどまり、依然として成長余地が大きいことがわかります。
風力・水力・原子力との比較
2024年の世界の電力構成比は、風力が約8%、水力が14%、原子力が9%です。水力は歴史的に最大のクリーン電源ですが、近年の伸びは緩やか。原子力も再稼働プロジェクトはあるものの、立地や安全性の課題が成長を制限しています。対して、風力と太陽光は設置コスト低減と建設スピードの両面で優位性を保ち、今後もミックス比率の拡大が見込まれる電源です。
1940年代以来の高水準
世界のクリーン電力比率が40%を超えたのは1940年代以来。当時は電力需要自体が小さく、水力発電が全体の大部分を占めていました。需要拡大に伴う化石燃料依存度の増加で一度は比率が低下したものの、再エネの爆発的導入が再び水準を押し上げた格好です。ただし、電力需要増のペースが再エネ成長を上回っているため、排出削減への転換点にはまだ到達していません。
現状の課題と引き続くチャレンジ
- 需要増加への対策:2025年以降も気候変動による極端気象が予測され、クリーン電力の成長だけでなく系統強化・需給調整技術の整備が急務です。
- 地域格差の是正:欧米・中国では再エネ導入が進む一方、アジア新興国では化石燃料依存から脱却が道半ば。技術移転と資金支援が必要です。
- 政策支援の継続:FITや入札制度、ネットワーク料金の見直しなど、再エネ促進策を安定的かつ柔軟に運用する枠組みが求められます。
Emberは今後、CO₂排出量が減少へ転じるタイミングを「2025年中」と予測しています。発電ミックスのさらなるクリーン化と、グリッド運用の革新が、地球規模での脱炭素を加速するカギを握るでしょう。
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