2025年3月27日、日立製作所と住友化学は、AIを軸に生産計画とエネルギー消費の最適化を同時に実現する「生産計画自動立案システム」の実証を、住友化学千葉工場・袖ケ浦地区(千葉県袖ケ浦市)で開始したと発表しました。製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)を両立させ、脱炭素社会に貢献する次世代のスマートファクトリー像を提示します。
背景:化学プラントの省エネと生産性のジレンマ
化学産業では、合成樹脂や特殊化学品の大量生産に伴い、多量の電力や蒸気が必要とされます。従来、住友化学千葉工場では生産計画チームとエネルギー管理チームが別々にスケジュールを組むため、全体最適を図り切れずにエネルギー過剰消費や運用コスト増を招く課題がありました。また、生産計画の見直しには熟練者のノウハウが必須で、属人化と重い業務負荷が現場を圧迫。これらを解決するため、両社は生産量と電力使用を一体的に最適化する仕組みづくりに着手しました。
システム概要:AIエンジンとLumada連携
日立が開発した計画連携エンジン「TSPlanner(ティーエスプランナー)」を中核に据え、AI最適化技術「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」と、工場向け「統合エネルギー・設備マネジメントサービス」をLumadaプラットフォーム上で連携させます。この構成により、
- 契約電力上限を超えないよう生産スケジュールを自動調整
- 廃熱回収した蒸気を他プロセスに再利用しエネルギー効率を最大化
- 異常検知するAIモデルがエネルギー消費パターンの変動要因を特定
といった機能を実現。従来は手作業で数時間かかっていた計画立案を、数分で生成・更新できる点も大きな特長です。
予備検証結果:過去データで効果実証
2024年度の実稼働データを用いたシミュレーションにより、従来の人手計画と比較し、年間で数%の電力消費削減が確認されました。これに伴い、CO₂排出量も同程度削減される見込みで、特にピーク時電力の抑制効果が大きく寄与。さらに、計画変更時のリードタイムが従来の半分以下に短縮され、生産現場の意思決定速度向上にもつながることが判明しています。
今後の展開と適用範囲
住友化学は袖ケ浦地区での実証を円滑に進め、国内6拠点の主要プラントへ順次展開する計画です。また、
- 需要予測や在庫管理システムとのデータ連携による計画精度向上
- 再生可能エネルギー自家消費最適化や自己託送活用を盛り込んだエネルギー運用
- カーボンプライシング対応のためのCO₂排出量トラッキング
など、AIによるスマートファクトリーの高度化を推進し、製造業全体の脱炭素・省人化モデルをリードしていきます。
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