2025年2月、Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)は、高耐圧かつ高効率を誇る「CoolSiC MOSFET 650V」ディスクリート製品ラインに、Q-DPAK と TOLL の 2 種類のパッケージファミリーを新たに追加したと発表しました。これにより、自動車の車載インバータから再生可能エネルギーシステム、AI サーバーや産業用スイッチング電源まで、幅広い用途での高効率化・小型化がさらに促進されます。
Q-DPAK パッケージの特長
低オン抵抗と高電力密度
Q-DPAK パッケージには、オン抵抗 7mΩ、10mΩ、15mΩ、20mΩ の 4 種類をラインアップ。いずれも CoolSiC Generation 2 技術を採用し、従来のシリコン MOSFET と比べてスイッチ損失を大幅に低減しつつ、同等以上の電流ハンドリング性能を発揮します。
上面・下面放熱対応でスペース最適化
95% 以上の直接放熱(DirectFET™ 相当機能)を実現し、プリント基板の両面を使った熱管理が可能。基板上の寄生インダクタンスを抑えながら、システム全体の占有面積を最大 30 % 削減できるため、コンパクト設計が求められる車載や産業機器で威力を発揮します。
TOLL パッケージの特長
サイクル耐性と小型化
TOLL(Thin Outline Low Loss)パッケージは、プリント基板上の温度サイクル耐性を強化した設計。オン抵抗帯域は10mΩ~60mΩをカバーしており、用途に応じて最適な製品を選択可能です。
システムコスト削減
小型・薄型のフットプリントにより、基板設計がシンプルになり部品点数も削減。スイッチモード電源のコンバータ設計において、製造リードタイムと部品コストの両方を低減します。
利用シーンと市場ニーズ
Infineon の CoolSiC MOSFET は、以下の市場での採用が進んでいます。
- AI サーバー/データセンター:高周波スイッチングによる冷却負担軽減
- 再生可能エネルギー:PV インバータや風力タービンの効率向上
- 電気自動車/充電インフラ:車載インバータおよび急速充電器での高効率運転
- e-モビリティ・産業用ロボット:動力制御ユニットの省スペース化
- 家電/テレビ駆動装置:待機電力低減による省エネ化
今回のパッケージ拡充により、これらの用途でさらなるシステム効率向上と設計自由度の拡大が期待されます。
拡充の背景と技術トレンド
SiC(シリコンカーバイド)デバイスは、従来のシリコンに比べバンドギャップが広く高温・高電圧環境に強いため、次世代パワーエレクトロニクスの中核技術として採用が進んでいます。メーカー各社が大電力用途向けのモジュール化を加速する一方、Infineon はディスクリート製品のパッケージ革新により、コンパクト設計と低コスト化を両立させるアプローチを強化しています。
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