2025年3月18日、積水化学工業と積水ソーラーフィルム(SSF)、沖縄電力、ユニチカの4社は、防草シート上に設置したフィルム型ペロブスカイト太陽電池の共同実証研究を、沖縄県宮古島市内の沖縄電力管理敷地にて開始しました。実証は、台風や高塩分潮風が年間を通じて吹き荒れる環境下で同製品の耐久性・発電性能・施工性を評価する、国内初の大規模フィールド実験です。
背景:日本の再エネ導入拡大と適地の課題
日本政府は2050年カーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの主力電源化を推進中ですが、平地が限られる国土構造から従来のシリコン型太陽電池の設置適地に制約があります。そこで注目されるのが、軽量かつ柔軟に施工できるフィルム型ペロブスカイト太陽電池です。農地や屋根、あるいは防草シート上など、これまで活用が難しかった場所への展開が期待され、導入シナリオの多様化に寄与します。
実証フィールドと評価項目
設置概要
- 設置面積:防草シート上に約10㎡のペロブスカイトモジュール
- 設置方式:特殊アンカー固定+接着システムにより簡易施工
- 実証期間:2025年3月18日~2026年3月17日(約1年間)
評価の観点
- 耐風性:台風接近時のモジュール飛散防止性能と取り外し/復旧の容易性
- 耐塩害性:塩分を含んだ潮風による表面劣化と電極腐食の進行度
- 発電性能維持率:降雨・高温・高湿環境下での出力安定性
- 施工性:4.5時間の短工期施工とアンカー設置の作業効率
- 長期メンテナンス:定期点検による劣化兆候の早期検知および補修工法
共同開発パートナーの役割
- 積水化学工業:モジュール技術の提供とシステム全体の開発統括
- SSF(積水ソーラーフィルム):基材となる防草シートへの一体化技術および製造ノウハウ
- ユニチカ:高耐候性封止材および導電性インクの開発支援
- 沖縄電力:現地インフラ提供と気象データ等の実証支援
協業体制により、それぞれが得意領域の技術を持ち寄ることで、独自の設置手法と耐候性能の検証を短期間で開始できる体制を整えました。
データ収集と次のステップに向けて
実証機にはIoTセンサーが搭載され、気象データ(風速、塩分濃度、温度、湿度)と発電量、モジュール表面の劣化状態をリアルタイムで遠隔監視。沖縄電力とSSFが月次で点検を実施し、データ分析結果をもとに材料改良や施工手順の最適化を図ります。
このフィールド実験の結果は、2026年上期に公表される予定です。今後は、防草シート以外の農地覆蓋、屋上・仮設施設への適用など、実証成果を横展開することで、台風・塩害リスク下でも安心して利用できる新たなソーラーソリューションとして市場導入を目指します。
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