福島市は、山形県境に近い先達山(せんだつやま)で建設中の大規模太陽光発電施設(メガソーラー)について、太陽光パネル未設置エリアへの植林拡大を事業者Ampに要請しました。造成による景観変化への住民からの苦情が続く中、法規上の強制力はないものの、市民の視点を尊重した早期の緑化対策を求める動きが加速しています。
造成規模と緑化の経緯
2024年秋に着工した先達山メガソーラーは、96,000枚のパネルを想定し、約60ヘクタールの山腹を切り土・盛り土で造成。既存植生の大半が除去され、市内中心部からも山肌の露出が目立つようになりました。市は当初、春からの植生シート敷設による芝生緑化を進めたものの、冬季には落葉しやすく緑が保たれない点が問題となりました。
市の要請内容とAmpの対応
2025年5月10日、市環境部長の斎藤誠一氏がAmp代表マルティン・シュタイン氏と面談。
- 要請事項:斜面計約1.8haのうち、左右二カ所の三角形エリアに常緑樹を主体とした本格植林を推進
- Ampの回答:「検討を開始しており、投資家にも働きかけ中」との説明にとどまり、具体的なスケジュールは未提示
Ampは現在、主投資家の再エネファンド運営会社Zエナジーなどと協議し、植林にかかる事業費や手法を詰めています。
住民団体の声と対話集会
5月10日に開かれた住民団体「先達山を注視する会」の集会では、木村明子氏ら地元住民約30名が参加。参加者からは「次世代にこの景観を残したい」「芝だけでは物足りない」という声が相次ぎ、Amp担当者も「芝と木の緑は印象が違う。何とかしたい」と率直に述べました。
植林技術と環境条件の課題
- 土壌酸性度:先達山の上部は火山性土壌で酸性度が高く、芝の定着性が低いと判明
- 常緑樹の選定:耐寒性のあるコナラやシラカシ、やまももなどを候補に、冬季でも緑を維持
- 維持管理:植林後の下草刈り・支柱設置など、安定成長に向けた年間管理コストが課題
これらをクリアするために、Ampは植林専門企業との連携や地元林業者との協働を検討中です。
規制申請をめぐる動き
同メガソーラーに対し、別の市民グループは造成許可時の書類不備を指摘し、県への許可取消し申し立てを実施。許認可手続きの適正化と並行し、市は「単なる緑化」以上の環境配慮を示すことで、地域の信頼回復を図ろうとしています。
2025年9月末稼働に向けた最終調整
施設は2025年9月末の営業運転開始を予定。今後は植林計画の詳細詰めと並行し、緑化エリアのモニタリング体制を構築。市は「クリーンエネルギーと景観保全の両立」を掲げ、先導的モデルケースとする姿勢を鮮明にしています。
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