【イノフィス】腰痛と人手不足を解決するマッスルスーツ~物流・製造業の未来を支えるINNOPHYSの挑戦~

人口減少と高齢化、EC需要の拡大が重なり、物流・製造業の現場は今、かつてない変革の時を迎えています。人手不足が慢性化し、従業員の身体的負担は増す一方。中でも、重量物を扱う現場では「腰痛」が深刻な経営リスクとなっており、特に物流業では業務上疾病のうち、腰痛が8割を占めるというデータもあります。
こうした背景のもと注目を集めているのが、東京理科大学発のスタートアップ企業「株式会社イノフィス」が開発した装着型アシストスーツ「マッスルスーツ」です。同社の製品は、腰や腕にかかる負担を軽減することで、作業者の健康と生産性を同時に支える“現場対応型”のソリューションとして、国内外で導入が進んでいます。

研究室から始まった“大きな支え”

イノフィスは2013年に設立された、東京理科大学発の技術ベンチャーです。東京理科大学の小林宏教授が、「誰でもいつまでも生きている限り自立した生活を実現させたい」という想いで、長年開発したマッスルスーツを、一人でも多くの人に届けるために事業化しました。現在、代表取締役CEOは乙川直隆氏が務め、資本金1億円、30,000台以上の出荷実績を持つ企業へと成長しています。
同社のミッションは、「生きている限り自立した生活を実現する」こと。人間の身体を支える技術に特化し、物流・製造・介護などの現場からの声を丹念に聞き取りながら、製品開発を進めてきました。

モーターを使わずに、腰を守る

マッスルスーツの最大の特徴は、電力ではなく「空気圧式人工筋肉」を使用している点です。軽量なゴムチューブにナイロンメッシュを巻いた構造で、空気を送り込むと収縮し、腰や腕の動作をサポートします。補助力は最大で約27kgfにも達し、重作業時の身体的負担を大きく軽減します。
使用者は背中部分の人工筋肉に空気を注入するだけで、ばねの力が働き、腰への圧力が分散。必要に応じて1~2回空気を再注入するだけで、長時間の作業にも対応可能です。これは、従来のサポーターやコルセットとは異なり、実際に「力を分担してくれる」装着型ロボットとも言える存在です。

あらゆる業種に対応できる7製品

イノフィスは、多様な作業環境に対応するために7つの製品バリエーションを展開。
  Every:最大25.5kgfの補助力、軽量で操作が簡単
  GS-BACK:スリム・軽量ながら適度な補助力を両立
  Soft-Power EASY-LIFT:超軽量設計で着脱も簡単
これらは国内外23カ国・地域で導入されており、日本国内では食品工場、倉庫、建設現場、自動車製造業まで、幅広い分野で実績を上げています。

導入企業の声:「現場にフィットするソリューション」

実際の導入企業では、以下のような具体的な効果が報告されています。
日本ロジテム株式会社:Eコマースの拡大により倉庫作業の負担が増す中、マッスルスーツがけがや離職を防ぎ、作業者の安全性と定着率の向上に貢献。
トヨタ車体株式会社:高齢化と女性労働者の増加に対応するため、腰に不安のある人でも安心して働ける環境づくりを推進。マッスルスーツを「補助具」として活用し、作業負荷を軽減。
ボッシュ株式会社:出荷作業の手作業による負担を減らすためにエクソスケルトン(マッスルスーツ)を導入し、従業員が健康的に長く働ける職場環境を整備。
加えて、東京都の効果検証では腰への負担を最大45%軽減、農林水産省の検証では作業時間を最大18%短縮する効果が確認されています。

社会全体で向き合うべき「環境と経済の両立」

近年、企業には環境への配慮が強く求められるようになっていますが、特に中堅企業では「環境対応=コスト増」という意識が根強く、現場レベルでの実行が難しい現実があります。利益を追求する経営の中で、環境施策は後回しになりがちなのが実情です。
しかし今後は、環境への取り組みが企業価値の評価軸となる時代です。補助金や助成制度、数値化された省エネ効果など、見える形で利益につながるスキームを活用することで、環境対応が“コスト”ではなく“戦略的投資”に変わります。社会全体が、企業の環境対応を「善意」ではなく「合理性と収益性」で評価する構造へと進化することが求められています。

経営者への提案:次世代インフラとしての選択

マッスルスーツは単なる労災対策や補助具ではなく、「人が働き続けられる仕組み」を構築する戦略的なツールです。現場の人材確保、生産性向上、環境対応という三つの課題に同時に応えることができる、まさに次世代のインフラです。現在、イノフィスはディープテック企業として上場も視野に入れ、さらなる製品開発・海外展開を進めています。今後も“現場目線”を貫く開発姿勢で、多くの業種の課題を支えていく存在となるでしょう。

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