「除湿の方が冷房より電気代が安い」——半分正解で半分間違いです。エアコンの除湿には「弱冷房除湿」と「再熱除湿」の2方式があり、電気代は1時間あたり約4円〜約15円と3.6倍もの差があります。弱冷房除湿なら冷房の約3分の1の電気代で済みますが、再熱除湿は冷房より高くつきます。3方式の電気代を計算式つきで比較しました。除湿機とのコスト差や、気温×湿度で選べる判断マトリクスも掲載しています。
エアコン除湿の電気代は1時間4〜15円【方式で3.6倍の差】
エアコン除湿の電気代は1時間あたり約4.1円〜約14.9円です。この差は除湿の仕組みの違いから生まれます。
弱冷房除湿・再熱除湿・ハイブリッド除湿の仕組み
弱冷房除湿は、冷房を弱くかけ続けて結露で水分を回収します。温度も湿度も同時に下がるため、消費電力は冷房の約3分の1で済みます。多くの家庭用エアコンがこの方式を採用しており、リモコンに「除湿」とだけ表示される機種はほぼ弱冷房除湿です。パナソニック、三菱電機、シャープの普及モデルが該当します。
再熱除湿は、冷やして水分を取り除いた空気をヒーターで温め直してから部屋に戻します。室温を下げずに湿度だけ下げられますが、冷却+再加熱の二重稼働で消費電力が跳ね上がります。ダイキン「うるさらX」の上位モデルや三菱電機「霧ヶ峰」の一部モデルが搭載しています。室温を維持したい梅雨時期に活躍しますが、電気代は覚悟が必要です。
ハイブリッド除湿は、室内の熱を再利用して空気を温め直します。ヒーターを使わないぶん、再熱除湿より省エネです。日立「白くまくん」の一部上位モデルなどが採用しています。再熱除湿のメリットを保ちつつ電気代を抑えた方式ですが、搭載機種は限られています。
3方式の1時間あたり電気代比較表
電力単価31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会、2022年7月改定)で算出しました。
| 除湿方式 | 消費電力 | 1時間あたり電気代 | 計算式 |
|---|---|---|---|
| 弱冷房除湿 | 約130W | 約4.1円 | 0.13kW × 31円 = 4.03円 |
| 冷房(参考) | 約355W | 約11.0円 | 0.355kW × 31円 = 11.01円 |
| 再熱除湿 | 約480W | 約14.9円 | 0.48kW × 31円 = 14.88円 |
出典:エネチェンジ「エアコンの除湿と冷房の電気代を比較」(設定温度24℃での実測値)
弱冷房除湿と再熱除湿では1時間あたり約10.8円の差です。8時間使えば1日で約86円、1ヶ月で約2,600円もの差になります。
月額・4ヶ月シーズンの電気代シミュレーション
1日8時間運転を想定した月額と、6月〜9月の4ヶ月シーズン(122日)の合計額です。
| 除湿方式 | 月額(8h×30日) | 4ヶ月シーズン(8h×122日) |
|---|---|---|
| 弱冷房除湿 | 約967円 | 約3,933円 |
| 冷房 | 約2,642円 | 約10,746円 |
| 再熱除湿 | 約3,571円 | 約14,523円 |
弱冷房除湿なら4ヶ月シーズンで約3,933円です。再熱除湿の約14,523円と比べると、同じ「除湿」でも約10,590円の差が生まれます。
計算式:1時間あたり電気代 × 8時間 × 日数。月額は30日、4ヶ月は122日(6〜9月)で算出しています。実際の電気代は設定温度、部屋の広さ、断熱性能で上下します。上記はあくまで同一条件での比較です。
冷房 vs 除湿 ── 電気代が安いのは「弱冷房除湿」
電気代の安さは弱冷房除湿 < 冷房 < 再熱除湿の順です。「除湿=安い」とは限りません。
冷房・弱冷房除湿・再熱除湿の電気代ランキング
| 順位 | モード | 1時間 | 月額(8h×30日) |
|---|---|---|---|
| 1位(最安) | 弱冷房除湿 | 約4.1円 | 約967円 |
| 2位 | 冷房 | 約11.0円 | 約2,642円 |
| 3位(最高) | 再熱除湿 | 約14.9円 | 約3,571円 |
弱冷房除湿は冷房の約37%の電気代で済みます。月額で約1,675円の節約です。
「除湿は電気代が安い」というネット上の情報は弱冷房除湿だけに当てはまります。再熱除湿はむしろ冷房より高いため、自分のエアコンの方式を確認せずに除湿モードを使い続けると損をします。
再熱除湿が冷房より高い理由
再熱除湿は、冷房と同じように空気を冷却して水分を取り除きます。ここまでは同じです。違いはその後、冷えた空気をヒーターで温め直す工程が加わる点です。
冷却の消費電力にヒーターの消費電力が上乗せされるため、冷房より約35%も電気代が高くなります。「除湿だから安い」と思い込んで再熱除湿を使い続けると、冷房より毎月約930円多く払うことになります。
自分のエアコンの除湿方式の見分け方
取扱説明書に記載がなくても、動作中の室温変化で判別できます。
除湿運転中に室温が2〜3℃下がる → 弱冷房除湿です。冷房と同じ仕組みなので、室温が下がるのは当然の動作です。
除湿運転中に室温がほぼ変わらない → 再熱除湿です。温め直しているため、室温は維持されます。
富士通ゼネラル「ノクリア」やコロナの一部機種は両方式を切り替えられます。リモコンに「除湿(ソフト)」「除湿(パワフル)」など複数の除湿モードがある場合は切替対応の可能性が高いです。
エアコン除湿 vs 除湿機 ── 6パターンのコスト比較
エアコン弱冷房除湿の月額は約645円で、全方式中の最安です。除湿機コンプレッサー方式でも月額約868円かかります。
6方式の電気代一覧表
すべて31円/kWh、1日8時間×月20日運転で統一しました。
| 方式 | 消費電力 | 1時間 | 月額(8h×20日) |
|---|---|---|---|
| エアコン弱冷房除湿 | 130W | 4.0円 | 645円 |
| 除湿機コンプレッサー | 175W | 5.4円 | 868円 |
| 除湿機ハイブリッド | 225W | 7.0円 | 1,116円 |
| 除湿機デシカント | 295W | 9.1円 | 1,463円 |
| エアコン冷房 | 355W | 11.0円 | 1,760円 |
| エアコン再熱除湿 | 480W | 14.9円 | 2,381円 |
電気代だけで見れば、エアコン弱冷房除湿が圧倒的に安いです。除湿機コンプレッサー方式と比べても月額約223円の差があります。
エアコン冷房の月額はこの表では1,760円(8h×20日)です。前セクションの2,642円(8h×30日)とは稼働日数が異なります。除湿機は毎日使う想定が現実的ではないため、月20日で統一しました。
部屋全体ならエアコン、衣類乾燥なら除湿機
エアコンの除湿は部屋全体の湿度を下げるのが得意です。リビングや寝室の湿度管理にはエアコン弱冷房除湿が最適です。8畳〜14畳の空間を均一に除湿でき、追加の設置スペースも不要です。
除湿機は洗濯物の近くに置いて集中的に水分を飛ばせるのが強みです。衣類乾燥モードで風を直接当てれば、部屋干しの乾燥時間を半分以下に短縮できます。浴室やクローゼットなど、エアコンが届かない場所の除湿にも活躍します。
「エアコンか除湿機か」の二択ではなく、用途で使い分けるのがベストです。部屋全体の快適性はエアコン、衣類乾燥はコンプレッサー式除湿機という組み合わせが電気代・実用性ともに最適です。
除湿機の方式別コスト・選び方の詳細は除湿機の電気代を方式別に比較した記事で解説しています。
弱冷房除湿と再熱除湿の使い分け判断表
最適な除湿モードは気温と湿度の組み合わせで決まります。以下の判断マトリクスで一発で選べます。
気温×湿度の判断マトリクス表
| 気温 | 湿度70%以上 | 湿度60〜70% | 湿度60%未満 |
|---|---|---|---|
| 30℃以上 | 冷房 | 冷房 | 除湿不要 |
| 25〜30℃ | 弱冷房除湿 | 弱冷房除湿 | 除湿不要 |
| 20〜25℃ | 再熱除湿 or 除湿機 | 再熱除湿 | 除湿不要 |
| 20℃未満 | 除湿機(デシカント) | 除湿機 | 除湿不要 |
判断の基本ルールは「暑ければ冷房、涼しければ再熱除湿か除湿機」です。気温25℃以上なら弱冷房除湿でも室温低下が気になりません。20℃以下はエアコン除湿だと寒くなりすぎるため、除湿機の出番です。
湿度60%未満なら除湿そのものが不要です。湿度計を1つ置いておくと、無駄な除湿運転を避けられます。1,000円前後のデジタル湿度計で十分です。
梅雨(低温高湿)→ 再熱除湿 or 除湿機
梅雨時期の典型的な条件は気温20〜25℃・湿度80%前後です。弱冷房除湿だと室温が20℃以下まで下がり、肌寒く感じます。
再熱除湿なら室温を維持したまま湿度だけ下げられます。電気代は弱冷房除湿の約3.6倍ですが、寒さを我慢してブランケットを使うより快適です。再熱除湿がないエアコンの場合は、コンプレッサー式除湿機で代用できます。月額約868円で室温を下げずに除湿できるため、梅雨のコスパは除湿機が優秀です。
真夏(高温高湿)→ 冷房 or 弱冷房除湿
気温30℃以上の真夏は、冷房が最適解です。冷房は温度と湿度を同時に下げるため、体感温度を効率よく下げられます。熱中症リスクもあるため、電気代よりも安全を優先してください。
気温25〜30℃で「冷房は寒い」と感じるなら弱冷房除湿に切り替えましょう。冷房の約3分の1の電気代で湿度を下げつつ、マイルドな冷却効果が得られます。7月上旬や9月中旬の「暑いけど冷房は強すぎる」時期に最適です。
エアコン除湿の電気代を下げる5つの節約術
設定と使い方の工夫で、エアコン除湿の電気代は月額約900円まで抑えられます。すぐ実践できる5つの方法です。
設定温度28℃で約10%削減
経済産業省 資源エネルギー庁によると、冷房の設定温度を1℃上げると消費電力が約10%下がります。設定温度を26℃から28℃に上げるだけで約20%の削減です。
弱冷房除湿の月額約967円が約774円になる計算です。年間の4ヶ月シーズンでは約787円の差になります。28℃だと暑く感じる場合は、次に紹介する扇風機との併用で体感温度を下げられます。
風量「自動」に設定
風量を「弱」に固定すると、室温が設定温度に到達するまで時間がかかります。その間、コンプレッサーがフル稼働し続けるため、逆に電気代が上がります。
「自動」にすれば、起動時は強風で素早く冷やし、設定温度に達したら弱風に切り替わります。トータルの消費電力は「自動」が最も少なくなります。
フィルターを2週間に1回掃除
フィルターにホコリが溜まると空気の通りが悪くなり、同じ温度を維持するために余計な電力を消費します。2週間に1回の掃除で冷房効率の低下を防げます。
掃除機でホコリを吸い取るだけで十分です。水洗いする場合は完全に乾かしてから戻してください。カビが繁殖すると除湿効率だけでなく健康にも悪影響があります。梅雨前の5月に一度しっかり洗っておくと、シーズン中のメンテナンスが楽になります。
扇風機・サーキュレーター併用
HTBエナジーの試算によると、エアコン26℃のみの月額は約5,382円です。28℃+扇風機に変えると月額約4,456円になり、月約926円の節約になります。
扇風機の風が体に当たると体感温度が2〜3℃下がります。エアコンの設定温度を上げても快適さは変わりません。
電気代についてさらに詳しくは扇風機の電気代をAC・DCモーター別に比較した記事をご覧ください。
電気代そのものを見直したい方は、電力会社の切り替えも有効です。【公式】Looopでんき
は、基本料金0円で使った分だけ支払う仕組みです。在宅時間が長い方は検討する価値があります。
30分以内の外出はつけっぱなし
エアコンは起動時に最も電力を消費します。30分程度の外出ならつけっぱなしの方が電気代は安くなります。
1時間以上の外出なら消した方が得です。この境目は外気温やエアコンの性能で変わりますが、30分が一般的な目安です。こまめなON/OFFを繰り返すより、つけっぱなしの方が結果的に省エネになるケースは多いです。
つけっぱなしの損益分岐点について詳しくはエアコンつけっぱなしの電気代シミュレーション記事で計算しています。
よくある質問
Q. エアコン除湿は24時間つけっぱなしで大丈夫?
機器の故障リスクは低いです。エアコンは連続運転を前提に設計されています。弱冷房除湿を24時間運転した場合の電気代は約97円/日(4.03円×24h)、月額で約2,900円です。夜間は外気温が下がり湿度も自然に低下するため、就寝時にタイマーで切った方がコスパは良くなります。深夜0時〜朝6時の6時間を止めれば月額約730円の節約です。
Q. 除湿モードで部屋が寒くなる場合の対処法は?
弱冷房除湿で寒くなるのは正常な動作です。対処法は3つあります。設定温度を1〜2℃上げる。風向きを上向きに変える。それでも寒ければ再熱除湿に切り替える。再熱除湿なら室温を下げずに除湿できます。電気代は上がりますが、寒さで体調を崩すよりは合理的です。
Q. 除湿と冷房、電気代が安いのはどっち?
弱冷房除湿が最安です。1時間あたり約4.1円で、冷房(約11.0円)の約37%です。再熱除湿は約14.9円で冷房より高くなります。「除湿は安い」が成り立つのは弱冷房除湿だけです。
Q. 梅雨時期は除湿と冷房どちらを使うべき?
気温25℃以上なら弱冷房除湿、20〜25℃なら再熱除湿か除湿機が適しています。梅雨は気温が低いため、冷房では室温が下がりすぎます。上の判断マトリクス表を参考に、そのときの気温と湿度で選んでください。
Q. 古いエアコンの除湿は電気代が高い?
10年以上前のエアコンは最新機種より消費電力が20〜40%高い傾向があります。特に2010年以前のモデルはインバーター制御の効率が低く、弱冷房除湿でも消費電力200W以上になることがあります。仮に200Wで月額を計算すると、0.2×8×30×31=約1,488円です。最新モデルの約967円と比べて月額約520円の差になります。15年以上使っている場合は買い替えた方が電気代でも元が取れる可能性が高いです。
エアコン除湿の最適解を見つける3ステップ
エアコン除湿の電気代は方式で3.6倍の差があります。弱冷房除湿なら月額約967円、再熱除湿は月額約3,571円です。最適な使い方を3ステップで決めましょう。
ステップ1:自分のエアコンの除湿方式を確認する。除湿運転中に室温が下がれば弱冷房除湿、変わらなければ再熱除湿です。
ステップ2:気温×湿度の判断マトリクスで選ぶ。30℃以上は冷房、25〜30℃は弱冷房除湿、20〜25℃は再熱除湿か除湿機、20℃未満は除湿機です。
ステップ3:節約術で電気代をさらに下げる。設定温度28℃、風量自動、フィルター掃除、扇風機併用の4つだけで月額約900円まで抑えられます。
エアコンの除湿は「方式を知っているかどうか」で電気代が大きく変わります。弱冷房除湿と再熱除湿の違いを知らないまま使い続けると、4ヶ月で1万円以上の差が出ます。まずは自分のエアコンの方式を確認することから始めてください。
毎月の電気代全体の目安を知りたい方は一人暮らしの電気代平均を間取り別に比較した記事も参考にしてください。
