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塩分濃度差発電は実現する?PRO・RED技術の原理と課題

更新: 2026/10/07執筆: Japan Energy Times 編集部
再生可能エネルギー
塩分濃度差発電は実現する?PRO・RED技術の原理と課題

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塩分濃度差発電は、海水と淡水の塩分濃度の差から電力を取り出す再生可能エネルギー技術です。主要な方式はPRO(浸透圧発電)とRED(逆電気透析)の2つで、どちらも実証の段階にあります。福岡市では2025年8月5日、海水淡水化施設の濃縮海水と下水処理水を使う国内初の浸透圧発電施設が発電を始めました(福岡地区水道企業団・協和機電工業・福岡市の発表)。

塩分濃度差発電のポイント
  • 方式はPRO(浸透圧発電)とRED(逆電気透析)の2つで、どちらも実証の段階
  • 福岡市では2025年8月5日に国内初の浸透圧発電施設が発電を開始。正味約110kW・年間最大88万kWhの見込み
  • 発電コストの推計はPROで0.15〜0.30ドル/kWh(1ドル150円で約23〜45円)。日本の事業用太陽光(10.9円/kWh)の約2〜4倍

塩分濃度差発電の2つの方式(比較表)

PROとREDは原理が根本的に異なります。

項目PRO(浸透圧発電)RED(逆電気透析)
原理半透膜を介した浸透圧でタービン回転イオン交換膜で直接発電
出力形態機械エネルギー→電力直流電力
発電コストの推計(IRENA・2020年時点を想定)0.15〜0.30ドル/kWh0.11〜0.20ドル/kWh
主要課題膜の目詰まり(ファウリング)膜コストと耐久性
実証の例福岡で正味約110kW(2025年8月〜)オランダで50kWのパイロット設備
国内の主な取り組み福岡地区水道企業団・協和機電工業・福岡市の施設山口大学(比嘉研)

PRO(浸透圧発電)の仕組み

PROは半透膜を介した浸透現象を利用します。淡水側から海水側へ水が移動する際に海水側の圧力が上昇します。この加圧された海水でタービンを回して発電する仕組みです。

日本では東京工業大学(現・東京科学大学)の谷岡明彦名誉教授のグループがPROの研究を進めてきました。福岡市の施設は、海水淡水化施設「まみずピア」から出る濃縮海水と、和白水処理センターの下水処理水を使います。正味の発電電力は約110kW、年間発電量は最大88万kWhの見込みです。

RED(逆電気透析)の仕組み

REDはイオン交換膜を交互に積層し、濃度差でイオンを移動させて直接電力を得る。タービンが不要でシステムが簡素です。

山口大学の比嘉研究室がREDの研究を進めています。課題はイオン交換膜のコストと耐久性です。IRENAの技術概要(2014年)は、膜が設備費の50〜80%を占めるとしています。REDの発電コストの推計は0.11〜0.20ドル/kWh(1ドル150円で約17〜30円)で、日本の事業用太陽光発電(2023年・10.9円/kWh)より高い水準です。

実用化の可能性と課題

塩分濃度差発電の最大の利点は、24時間安定して発電できることです。太陽光や風力と異なり天候に左右されません。

課題は3つあります。第一に膜のファウリング(目詰まり)です。海水中の微生物や有機物が膜に付着し、性能が劣化します。第二に膜コストです。大規模発電には大面積の膜が必要で、コスト低減が不可欠です。第三に立地の制約です。河口や下水処理場の近くに海水取水施設が必要となります。

世界と日本の研究動向

ノルウェーのStatkraft社は2009年に世界初のPROの試作プラントを稼働させました。同社は2013年12月、見通せる将来のうちに競合する技術と並ぶ発電コストにはできないとして、開発を打ち切りました。

日本では福岡市の施設が2025年8月に発電を始めました。日本初、世界でも2例目の浸透圧発電施設です。海水淡水化施設の濃縮海水と下水処理水という、もともと放流していた水を使います。建設費は公表されておらず、地熱発電の設置費用のように1kWあたりの金額で比べることはできません。

膜技術では日本企業(東レ、日東電工等)が世界をリードしています。逆浸透膜(RO膜)の技術蓄積がPRO膜の開発に活かされています。

エネルギー分野への影響(実現した場合)

仮に大規模実用化が実現すれば、河口域で安定的なベースロード電源を確保できます。日本は海岸線が約3万5,000kmと世界有数の長さであり、潜在的な発電資源は豊富です。

小水力発電と組み合わせた分散型電源としての可能性もあります。

よくある質問

Q: 塩分濃度差発電はいつ実用化されるのか?

福岡市の浸透圧発電施設が2025年8月5日に発電を始めました。日本初、世界でも2例目です。正味約110kWの規模で、通常の海水を使う発電は次の段階に置かれています。大規模な商業展開には膜コストの低減が必要で、IRENAは膜の価格を1m²あたり10〜30ユーロから2〜5ユーロへ下げることを条件に挙げています。

Q: 発電コストはどのくらいか?

IRENAの技術概要(2014年)は、2020年時点を想定した推計としてPROで0.15〜0.30ドル/kWh、REDで0.11〜0.20ドル/kWhを示しています。1ドル150円で換算するとPROは約23〜45円/kWhで、日本の事業用太陽光(2023年・10.9円/kWh)の約2〜4倍です。IRENAはこの幅について、推測の度合いが大きいと注記しています。福岡の施設の発電コストは公表されていません。

Q: 環境への影響はあるか?

発電時にCO2を排出しません。海水と淡水の混合は河口で自然に起きている現象です。取水・排水が生態系に与える影響を詳しく調べた研究は少なく(IRENA)、施設ごとの評価が必要です。

Q: 日本以外ではどの国が進んでいるか?

ノルウェーのStatkraftは2009年に世界初のPROの試作プラントを動かしましたが、2013年12月に開発を打ち切りました。オランダではREDstackが富士フイルムと共同で、締切大堤防(アフスライトダイク)に50kWのREDのパイロット設備を設けています(IRENA、2014年)。

Q: 一般家庭で塩分濃度差発電はできるか?

現時点では不可能です。大量の海水と淡水の取水設備、専用の膜モジュールが必要であり、家庭規模での導入は技術的にも経済的にも現実的ではありません。

塩分濃度差発電の現状を確かめる3ステップ
  1. 1
    2つの方式の違いを押さえる
    PROは浸透圧で加圧した海水でタービンを回す方式。REDはイオン交換膜でイオンを移動させて直接電力を得る方式
  2. 2
    福岡の施設の規模を確認する
    正味の発電電力は約110kW、年間発電量は最大88万kWhの見込み。使うのは海水淡水化施設の濃縮海水と下水処理水
  3. 3
    膜コストの課題を見る
    IRENAによると膜は設備費の50〜80%。膜の価格を1m²あたり10〜30ユーロから2〜5ユーロへ下げることが条件に挙げられている

塩分濃度差発電の技術を理解するための情報源

塩分濃度差発電は日本の海岸線を活かした独自のエネルギー源になり得る。国内では福岡市の施設が2025年8月に発電を始めました。今後の膜技術の進歩と発電コストの低減に注目してください。塩分濃度差発電の基本的な仕組みについては塩分濃度差発電(浸透圧発電)の原理と実用性で詳しく解説しています。

  • 東京工業大学(現・東京科学大学) 谷岡研究室 — PROの基礎研究
  • 山口大学 比嘉研究室 — REDの研究開発
  • 福岡地区水道企業団・協和機電工業・福岡市の発表(2025年7月)— 国内初の浸透圧発電施設の出力と発電量
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この記事の執筆: Japan Energy Times 編集部
電気代・再生可能エネルギー・省エネの一次情報(公式統計・料金表・制度資料)を確認して記事を制作しています。
カテゴリ:再生可能エネルギー

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