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水素発電所は採算取れる?ガス火力との発電コスト比較【2026年】

更新: 2026/10/07執筆: Japan Energy Times 編集部
再生可能エネルギー
水素発電所は採算取れる?ガス火力との発電コスト比較【2026年】

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ポイント
  • 水素専焼発電のコストは2040年時点の試算で29.9円/kWh。同じ試算のLNG火力19.3円/kWhの約1.5倍(資源エネルギー庁の発電コスト検証・2025年2月とりまとめ)
  • 2017年の水素基本戦略は、水素の供給コストが30円/Nm³まで下がった段階の水素発電コストの目安を17円/kWhと置いている
  • JERAとIHIは2024年4月〜6月、碧南火力発電所4号機で、大型の商用石炭火力では世界初となるアンモニア20%転換(熱量比)の実証試験を行った

水素専焼発電のコストはLNG火力の約1.5倍

メリット

  • 燃焼時にCO2を排出しないクリーンな発電手段で、2050年カーボンニュートラルの切り札となる
  • 既存のガスタービンを改造して水素混焼に対応でき、既存発電インフラを活用した段階的転換が可能
  • JERAとIHIは2024年4月〜6月に碧南火力4号機でアンモニア20%転換の実証試験を行い、NOxは転換前と同等以下、SOxは約20%減を確認した
  • 2017年の水素基本戦略は、供給コスト30円/Nm³の段階の水素発電コストを17円/kWh、20円/Nm³の段階を12円/kWhと置いている

デメリット・課題

  • 水素専焼発電のコストは2040年時点の試算で29.9円/kWhとLNG火力(19.3円/kWh)の約1.5倍で、1GW級・年6,000時間稼働の差額は約640億円
  • 水素基本戦略の出発点は100円/Nm³(2017年当時の水素ステーション販売価格)で、2030年の供給コスト目標30円/Nm³(輸入水素のCIFコスト)の3倍以上
  • 水素は天然ガスより燃焼速度が速く逆火のリスクがあり、専用の燃焼器設計・改造が必須
  • グリーン水素前提の場合、再エネ→水素変換→発電という二重変換でエネルギーロスが積み上がる

水素専焼発電のコストは、2040年に発電設備を新設・運転する場合の試算で29.9円/kWhです。同じ試算のLNG火力19.3円/kWhの約1.5倍にあたる。資源エネルギー庁の発電コスト検証ワーキンググループが2025年2月にまとめた数字で、海外からブルー水素を輸入する前提の基本ケース(政策経費あり)です。同じ前提の幅は27.0〜29.9円/kWh、国産のグリーン水素を使う場合は24.4〜33.1円/kWhです。この試算の前提では、燃料費の差を埋める支援か高い炭素価格がない限り、水素専焼はLNG火力に対して採算が取れません。

水素発電は燃焼時にCO2を排出しないクリーンな電源として期待されています。しかし、経済性の面ではLNG火力との差が歴然としています。LNG火力の発電コストは19.3円/kWh(2040年のモデルプラント試算・CO2対策費用7.1円/kWhを含む)であり、水素専焼との差額は10.6円/kWhです。1GW級の発電所で年間6,000時間稼働した場合、この差額は年間約640億円の追加コストに相当する計算です。CO2対策費用を除いたLNG火力(12.2円/kWh)と比べると、差は17.7円/kWh、約2.5倍に広がります。

水素発電を商業的に成立させるには、水素の調達コスト削減が不可欠です。水素基本戦略の出発点は100円/Nm³(2017年当時の水素ステーション販売価格)で、政府は供給コスト(輸入水素のCIFコスト)を2030年に30円/Nm³、2050年に20円/Nm³へ下げる目標を掲げています。2017年の水素基本戦略は、30円/Nm³の段階の水素発電コストを17円/kWh、20円/Nm³の段階を12円/kWhと置いています(戦略が示した目安で、計算の前提は2025年の発電コスト検証と同じではありません)。この水準まで下がれば、カーボンプライシングとの組み合わせでLNG火力と競争できる範囲に入ります。

各電源の発電コスト比較

水素発電の経済性は他の電源と比較すると、水素専焼の29.9円/kWhが下の表の中で最も高いです。以下は資源エネルギー庁の発電コスト検証(2025年2月とりまとめ)が示した2040年のモデルプラント試算の主要数値です(政策経費あり。火力は基本ケースの値、太陽光・風力・原子力は試算の幅)。

電源発電コスト(円/kWh)CO2排出備考
水素専焼29.9燃焼時ゼロ海外ブルー水素を輸入する前提(幅は27.0〜29.9。国産グリーン水素なら24.4〜33.1)
アンモニア専焼23.1燃焼時ゼロ海外ブルーアンモニアを輸入する前提(試算の幅は21.0〜27.9)
CCS付LNG火力19.2大部分を回収CO2回収・貯留コスト含む(試算の幅は17.1〜21.1)
LNG火力19.3あり(約340g/kWh)CO2対策費用7.1円/kWhを含む(試算の幅は16.0〜21.0)
石炭火力(アンモニア20%混焼)27.3あり2040年の試算に石炭専焼の区分はない(試算の幅は21.1〜32.0)
太陽光(事業用)6.9〜8.8ゼロ設備利用率18.3%
陸上風力12.6〜14.5ゼロ設備利用率29.6%
原子力12.5〜ゼロ設備利用率70%

表の脱炭素電源の中で、基本ケースの水素専焼は最もコストが高いです。アンモニア専焼(23.1円/kWh)やCCS付LNG(19.2円/kWh)と比較しても割高です。発電コスト検証は水素専焼の資本費と運転維持費をLNG火力と同じ額に置いており、差は燃料費から生じます(水素専焼は燃料費25.8円/kWh、LNG火力は燃料費8.1円とCO2対策費用7.1円)。太陽光や陸上風力は7〜15円/kWhで発電できます。国産グリーン水素を使う場合(24.4〜33.1円/kWh)は、「つくった電気を水素に変換し、再び電気に戻す」という二重変換のエネルギーロスが価格に乗ります。

2017年の水素基本戦略は、供給コストが30円/Nm³まで下がった段階の水素発電コストを17円/kWhと置いています。この水準であれば、CCS付LNG火力(19.2円/kWh)や着床式洋上風力(2040年の試算で13.5〜14.3円/kWh)と比較可能な範囲に入る。

水素発電のコスト構造を分解する

水素発電のコストは「燃料費」「設備費」「運転維持費」の3要素で構成されます。最大のコストドライバーは燃料費(水素調達コスト)です。

燃料費:全体の約86%を占める

水素専焼29.9円/kWhのうち、燃料費は25.8円/kWhです(発電コスト検証の基本ケース。残りは資本費2.1円、運転維持費1.8円、政策経費0.1円)。水素1kgの発熱量は約33.3kWh(低位発熱量120MJ/kg基準)だが、発電効率(ガスタービン複合発電で55〜60%)を考慮すると、1kWhの発電に必要な水素量は約0.05〜0.06kgとなります。水素価格が1kgあたり300〜400円(2030年の供給コスト目標334円/kgの前後)であっても、燃料費だけで15〜24円/kWhに達します。

比較対象のLNG火力では、燃料費が発電コストの約4割を占めます(19.3円/kWhのうち8.1円)。水素基本戦略は、2023年3月のLNG価格を水素の供給コストに換算すると24円/Nm³になると示しており、出発点の100円/Nm³はその約4倍です。発電コスト検証は、水素専焼とLNG火力の発電効率を同じ57%に置いています。

設備費:ガスタービンの改造・新設

発電コスト検証は、水素専焼の資本費をLNG火力と同じ額に置いています(水素燃焼器や水素供給設備のコストは加味していない前提)。水素は天然ガスより燃焼速度が速く、逆火(バックファイア)のリスクが高いため、燃焼器の設計変更が必要です。三菱重工業は2023年11月、高砂水素パークの実証発電設備で、大型のJAC形ガスタービンによる水素30%混焼運転に成功したと発表しました。川崎重工業は2022年8月、30MW級ガスタービン「L30A」に搭載する水素30%混焼の燃焼器の販売を始めています。

既存のLNG火力を水素混焼に改造する場合は、燃焼器の交換が改造の中心です。発電所全体を新設するより投資を抑えられ、混焼から段階的に専焼へ移行するのが経済合理性の高いアプローチです。

運転維持費:水素脆性への対応が必要

水素専焼の運転維持費はLNG火力と大きな差はありません。ただし、水素は金属を脆化させる「水素脆性」のリスクがあり、配管や圧力容器の定期的な検査・交換コストがLNG火力よりやや高くなります。高圧水素を扱うため、高圧ガス保安法に基づく定期検査の頻度と費用が増加する点も考慮すべきです。発電コスト検証は、出力60万kWのモデルプラントの運転維持費を40年で1,532億円(年あたり約38億円)と置き、水素専焼もLNG火力と同じ額にしています。

JERAのアンモニア混焼実証が示す現実

水素・アンモニア発電の実用化で最も先行しているのがJERAです。JERAとIHIは2024年4月1日、碧南火力発電所(愛知県)4号機でアンモニア20%転換(熱量比)の実証試験を始め、6月26日に終えました。大型の商用石炭火力発電機でのアンモニア20%転換は世界初です。

碧南実証の概要

  • 発電所:碧南火力4号機(出力100万kW)
  • 混焼率:アンモニア20%(熱量ベース)
  • CO2削減効果:混焼率に応じて約20%削減
  • アンモニア使用量:年間約50万トン(20%混焼時)
  • 結果:定格出力100万kWで20%転換を達成。窒素酸化物(NOx)は転換前と同等以下、硫黄酸化物(SOx)は約20%減(IHIの発表)
  • 今後の計画:JERAは4号機で20%転換の商用運転を始める方針。IHIは50%以上の高比率燃焼技術と100%燃焼バーナの開発に取り組む。国の資料は、2028年度までに50%以上の高混焼に向けた燃焼器の開発や実証を行うとしている

碧南実証のインパクトは技術的な成功だけでなく、「既存の石炭火力をアンモニア混焼に転換する」という移行戦略の実現可能性を示した点にあります。

アンモニアvs水素:キャリアとしての比較

項目水素(H2)アンモニア(NH3)
体積エネルギー密度低い(常温常圧で0.09kg/m³)高い(液化時682kg/m³)
輸送・貯蔵高圧(70MPa)or 液化(-253℃)が必要常温で10気圧、または-33℃で液化可能
専焼LCOE29.9円/kWh23.1円/kWh
CO2排出ゼロゼロ(ただしNOx排出あり)
既存インフラ活用限定的化学肥料の既存サプライチェーンを活用可能

アンモニアは水素キャリアとして輸送・貯蔵のコスト面で優位性があります。しかし、アンモニア自体の製造にも水素が必要であり(ハーバー・ボッシュ法)、サプライチェーン全体のコストとエネルギー効率を評価する必要があります。アンモニアの合成効率は約60%であり、水素からアンモニアへの変換で約40%のエネルギーロスが生じる。JERAの実証は「まずは混焼から始め、段階的に専焼へ移行する」という現実的なアプローチを採用しています。

水素供給コスト目標と達成見通し

水素発電の採算性は水素供給コストの低減に全面的に依存します。日本政府が掲げる供給コスト目標の達成見通しを検証します。

政府のコストロードマップ

時期供給コスト目標(円/Nm³)kg換算(円/kg)現状・見通し
出発点(2017年の戦略)約100約1,110当時の水素ステーション販売価格
2030年30約334輸入水素のCIFコストの目標
2050年20約222水素発電コストをガス火力以下にする水準

出発点の100円/Nm³から2030年の30円/Nm³への引き下げは、数字のうえで約70%の削減です。出発点はステーションでの販売価格、目標は輸入水素を日本の港で受け取る時点のCIFコストで、含む範囲が違う点に注意が要ります。目標の達成には以下の条件が必要です。

  • オーストラリア・中東・チリなど安価な再エネが豊富な地域での大規模グリーン水素製造
  • 水素キャリア(液化水素・MCH・アンモニア)の輸送コスト削減
  • 水電解装置のコスト低減——政府の2030年目標はアルカリ型5.2万円/kW、PEM型6.5万円/kW
  • 年間100万トン規模のサプライチェーン構築

日本政府は2030年の水素(アンモニアを含む)の導入目標を最大300万トン/年に設定している(水素基本戦略改定版)。国内でいま使われている水素は石油精製などの産業用が中心で、クリーン水素への転換と増量を同時に進める必要があります。水素エネルギーのコスト分析で詳述している通り、製造・輸送・貯蔵の各段階でコスト削減が必要であり、単一の技術ブレークスルーだけでは達成困難です。

カーボンプライシングと水素発電の経済性

CO2排出に価格をつけるカーボンプライシングは、水素発電の経済性を大きく左右します。発電コスト検証の2040年のLNG火力19.3円/kWhには、CO2対策費用7.1円/kWhがすでに含まれています。下の表は、これを除いた12.2円/kWhに、CO2排出量340g/kWh(当サイトの前提)へ炭素価格を掛けた額を足した当サイトの試算です。

炭素価格別のLNG火力コスト変動

炭素価格(円/tCO2)LNG火力の追加コスト(円/kWh)LNG火力の総コスト(円/kWh)
4,300(日本の排出量取引制度・2026年度の上限価格)約1.5約13.7
7,000約2.4約14.6
10,000(EU ETSの2024年の水準に近い)約3.4約15.6
15,000約5.1約17.3
20,000約6.8約19.0

EU排出権取引制度(EU ETS)の炭素価格は2024年に1トンあたり60〜80ユーロ(約1万〜1.3万円)で推移しました。日本のGX推進法に基づく排出量取引制度は2026年4月に始まり、2026年度の上限価格は4,300円/トン、下限価格は1,700円/トンです。水素発電コストが17円/kWh(供給コスト30円/Nm³の段階の目安)まで下がった場合、上の試算でLNG火力が同じ水準になるのは炭素価格1万5,000円/tCO2の前後です。水素の供給コストと炭素価格の両方の条件がそろうかどうかが、水素発電の将来を決定づけます。

水素発電が採算に近づく3つの条件
  1. 1
    水素供給コストを30円/Nm³以下に引き下げる

    中東・チリなど再エネ電力の安い地域での大規模グリーン水素製造と、液化水素・MCH・アンモニアのキャリア輸送コスト削減が前提条件。水電解装置の政府目標(2030年にアルカリ型5.2万円/kW、PEM型6.5万円/kW)の達成も条件になる。

  2. 2
    カーボンプライシング(炭素税)の本格導入

    LNG火力にCO2排出コストが課されることで水素発電との価格差が縮まる。炭素価格が1万5,000円/tCO2なら、LNG火力のコストはCO2対策費用を除いた12.2円/kWhから約5円/kWh上がる(当サイトの試算)。

  3. 3
    混焼から専焼へ段階移行

    既存のLNG・石炭火力に水素やアンモニアを20〜50%混焼する段階から始め、インフラを維持しながら専焼へ移行する。碧南火力の実証(20%転換)のように段階を踏む進め方が現実的。

水素発電はどの用途で採算が合うのか

コスト面で不利な水素発電にも、特定の用途では合理性があります。

用途1:再エネの長期貯蔵と調整力

太陽光・風力の余剰電力で水素を製造し、電力需要のピーク時に水素発電で放電する「Power-to-Gas-to-Power」方式は、季節間の電力貯蔵が可能な数少ない技術です。蓄電池は数時間〜数日の短期貯蔵に適するが、数週間〜数か月の長期貯蔵には水素が有力な選択肢となります。液体空気蓄エネルギー(LAES)と比較しても、水素は大規模・長期間の貯蔵において優位性があります。往復効率(Round-trip efficiency)は水素が30〜40%、LAESが50〜60%とLAESが上回るが、貯蔵可能なエネルギー密度では水素が圧倒します。

用途2:離島・僻地の電力供給

ディーゼル発電に依存する離島では、発電コストが50〜80円/kWhに達するケースがある(沖縄電力・九州電力離島料金)。発電コスト検証の29.9円/kWhは出力60万kWの大型プラントに輸入水素を使う試算で、離島の小規模な設備にそのまま当てはまる数字ではありません。再エネ+水素の組み合わせにより、燃料輸送コストの削減と脱炭素を同時に実現できます。

用途3:産業用高温熱源

鉄鋼・セメント・ガラスなどの産業は1,000℃以上の高温熱源を必要とします。電化が困難なこれらのプロセスでは、水素燃焼が脱炭素の有力な手段です。日本の産業部門のCO2排出量は年間約3.5億トン(2022年度・環境省)です。水素の需要拡大を通じてスケールメリットが働けば、発電用途のコスト低減にも間接的に寄与します。

用途4:電力系統の慣性力確保

太陽光・風力の導入拡大に伴い、同期発電機を持たないインバーター電源の比率が上昇しています。電力系統の周波数安定には回転体による慣性力が必要であり、水素ガスタービンは同期発電機として慣性力を提供できます。この「系統安定化価値」は現時点で市場価格に反映されていないが、将来的にはアンシラリーサービスとして収益化される可能性があります。

世界の水素発電プロジェクト動向

水素発電は日本だけでなく世界各国でプロジェクトが進行しています。

主要プロジェクト一覧

国プロジェクト名規模状況
日本JERA碧南アンモニア混焼100万kW(20%混焼)2024年4〜6月に実証試験
日本神戸市水素CGS実証1MW級2018年4月に市街地で水素100%の熱電供給を達成(NEDO事業の実証試験)
アメリカAdvanced Clean Energy Storage+IPP Renewed(ユタ州)水電解220MW・発電840MW2025年に水素30%混焼で運転を始め、2045年に100%専焼を目指す計画(2020年の受注時の発表)
オーストラリアWestern Green Energy Hub第1期は最大8GWの風力・太陽光+水素西オーストラリア州の環境保護庁が公開環境審査で審査中(2025年7月時点)

アメリカのAdvanced Clean Energy Storageプロジェクトは、220MWのアルカリ型水電解装置でつくった水素を2つの岩塩空洞(各450万バレル)に貯蔵し、隣接する840MWのガスタービン複合発電の燃料にするP2G2P(Power-to-Gas-to-Power)施設です。米エネルギー省は2022年6月に5億440万ドルの融資保証を出しました。この規模のプロジェクトが商業運転に成功すれば、水素発電の経済性に関する知見が大幅に蓄積されます。

日本の水素発電ロードマップと目標

日本政府は2023年6月に「水素基本戦略」を改定し、水素発電を含む水素利用の拡大目標を示しました。

水素基本戦略の主要目標

  • 2030年:水素(アンモニアを含む)の導入目標 最大300万トン/年、供給コスト30円/Nm³、水電解装置の導入目標15GW程度(国内外の日本関連企業)
  • 2040年:導入目標1,200万トン/年程度
  • 2050年:導入目標2,000万トン/年程度、供給コスト20円/Nm³

発電分野では、石炭火力へのアンモニア20%混焼を2020年代後半に商用運転へ進め、2050年に向けて混焼から専焼へ進める方針です。グリーンイノベーション基金では、50%を超える混焼率の実現や専焼バーナーの開発を支援しています。

この目標の実現には、国内の技術開発だけでなく、海外からの水素サプライチェーン構築が鍵となります。日本はオーストラリア(褐炭水素)、サウジアラビア(ブルー水素・アンモニア)、チリ(グリーン水素)との間で二国間協力を進めています。バイオ燃料と同様に、水素も国際的な価格競争と供給安定性のバランスが問われます。

水素発電の採算性に関するよくある質問

水素発電は補助金なしで採算が合うのか

現時点では合いません。水素専焼29.9円/kWh(2040年時点の試算)は、卸電力取引所の足元の価格(10〜15円/kWh程度)を大幅に上回る。CO2排出に高い価格がつけば、LNG火力との差は縮小します。EUの排出権取引価格は2024年に1トンあたり約60〜80ユーロ(約1万〜1.3万円)で、同じ水準の炭素価格ならLNG火力のCO2コストは約3.4〜4.4円/kWhです(340g/kWhで計算)。発電コスト検証のLNG火力19.3円/kWhには、CO2対策費用7.1円/kWhがすでに含まれています。国は2023年度から、新設・リプレースなどの脱炭素電源を対象に原則20年の供給力を確保する長期脱炭素電源オークションを始めており、水素やアンモニアを使う電源も対象です。

水素発電とFCV(燃料電池車)の関係は

FCV(燃料電池車)と水素発電は、水素サプライチェーンを共有する関係にあります。FCV向けの水素ステーション整備が進めば、水素の流通量が増加し、スケールメリットによる調達コスト低減が期待できます。

水素混焼と専焼のどちらが現実的か

短期的には混焼が現実的です。発電コスト検証の2040年の試算では、LNG火力に水素を10%(熱量比)混焼した場合の発電コストは20.3円/kWhで、LNG専焼の19.3円/kWhより1.0円高い水準です。既存の発電所を活用できるため、新規建設のリスクもありません。専焼への移行は水素供給コストが30円/Nm³以下に低下してから段階的に進めるのが合理的です。

水素発電はいつ頃コスト競争力を持つのか

2017年の水素基本戦略は、供給コスト30円/Nm³の段階の水素発電コストを17円/kWhと置いています。発電コスト検証の2040年の試算は29.9円/kWh(海外ブルー水素)で、LNG火力19.3円/kWhとの差が残っています。水素の供給コストと炭素価格の両方に左右されるため、時期の見通しは不確実性が大きいです。

水素発電より蓄電池のほうが有利ではないか

短期(数時間〜1日)の電力貯蔵ではリチウムイオン蓄電池が圧倒的に有利です。しかし、数週間〜数か月の季節間貯蔵では蓄電池のコストが非現実的に高くなります。水素は「長期貯蔵の切り札」として位置づけるのが合理的です。蓄電池の導入と水素発電は競合ではなく補完関係にあります。

水素発電への投資判断に必要な情報源

水素発電の採算性を判断するには、以下の一次情報源に当たることが不可欠です。

  • 資源エネルギー庁「発電コスト検証に関するとりまとめ」(2025年2月)——2040年の水素専焼29.9円/kWh、LNG火力19.3円/kWh、アンモニア専焼23.1円/kWh等の試算
  • 水素基本戦略(2023年6月改定)と2017年12月の水素基本戦略——供給コスト目標30→20円/Nm³、出発点の100円/Nm³、水素発電コストの目安17円・12円/kWh
  • JERA・IHIのリリース(2024年4月1日・6月26日)——碧南火力4号機のアンモニア20%転換実証の開始と終了
  • 経済産業省「排出量取引制度」——2026年4月に始まった制度と上限・下限価格
  • IEA「Global Hydrogen Review 2024」——世界の水素プロジェクトFID状況と市場分析
  • 三菱重工業のリリース(2023年11月30日)——JAC形ガスタービンの水素30%混焼運転

水素発電は現時点ではコスト面で明確に不利です。しかし、脱炭素社会における長期電力貯蔵や系統安定化力として、他の技術では代替できない役割を持つ。投資判断においては「水素供給コストの低減速度」と「カーボンプライシングの導入時期」の2変数を注視すべきです。グリーン水素のコスト動向も合わせて確認してください。

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この記事の執筆: Japan Energy Times 編集部
電気代・再生可能エネルギー・省エネの一次情報(公式統計・料金表・制度資料)を確認して記事を制作しています。
カテゴリ:再生可能エネルギー

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