大きな地震のあと、ライフラインは電気が最初に戻り、水道と都市ガスはそれより時間がかかります。首都直下地震の新しい被害想定(2025年12月)では、電線の被害による停電は1週間後に約2%まで減ります。水道は、約1か月後にほとんどの断水が解消します。都市ガスは、約5週間で供給の支障が解消します。
発電所の復旧には1か月程度かかるため、電気は4日目以降も時間帯を区切って使う想定です。よく引用される「電気6日・水道30日・ガス55日」は、2005年の古い想定の値です。
この記事のポイント
- 能登半島地震のように道路が壊れると、水道は月単位で延びます(本管の復旧まで約5か月)
- 高層マンションは、停電だけで上の階へ水を送るポンプが止まり、断水します
- 備えは3日分、大規模な災害なら1週間分が国の目安です
ライフラインが戻る順番と日数
首都直下地震(都心南部直下地震)の新しい想定で、止まっている割合がどう減っていくかを図にしました。割合は、電気が停電している軒数、水道が断水している人口、都市ガスが止まっている戸数の割合です。
首都直下地震(都心南部直下地震)の新しい想定で、ほぼ解消するまでの期間の順
割合は数える単位が違うので、横に並べて比べられません。順番は、ほぼ解消するまでの期間(電気 約1週間=電線の被害の分・水道 約1か月・都市ガス 約5週間)で見ています。水道とガスの差は1週間ほどで、1か月後の割合はどちらも2%です。
電気の「1週間後2%」は、電線が壊れたことによる停電だけを数えた値です。発電所の復旧には1か月程度かかるため、4日目以降は計画停電や節電の要請で、1日のうち決まった時間帯に電気を使う形を想定しています。想定は「復旧に係る条件が厳しい地域では供給停止がさらに長期化する可能性がある」とも書いています。
新しい想定と2005年の想定の違い
「電気6日・水道30日・ガス55日」は、2005年に国の専門調査会が東京湾北部地震を想定して出した数字です。電気・通信・上水道は政策の目標として置いた日数で、都市ガスだけは算定した日数です。新しい想定は、止まっている割合が日を追ってどう減るかで示しています。
| ライフライン | 新しい想定(2025年12月) | 2005年の想定 |
| 電気 | 直後に約5割が停電。発電所の復旧に1か月程度 | 6日(目標) |
| 固定電話・携帯電話 | 数日後〜1週間後に広い範囲の不通が解消 | 14日(固定電話・目標) |
| 上水道 | 直後に約3割が断水。約1か月でほぼ解消 | 30日(目標) |
| 都市ガス | 直後に約1割が停止。約5週間で解消 | 55日(算定) |
2005年の想定の目標日数は「止まった分の95%が戻るまで」、ガスの55日は「80%が戻るまで」で数えています。電気・水道の日数とガスの日数は、数え方が違います。
地震のあと、止まる順番
電気・都市ガス・水道は揺れの直後から止まります。携帯電話も直後から混み合ってほとんどかからず、数時間後から翌日にかけては基地局の非常用電源が切れて、つながらない地域が最も広がります。新しい想定が描く、発災直後から翌日までの様子は次のとおりです。
| ライフライン | 止まる時期 | 止まる理由 |
| 電気 | 揺れの直後 | 発電所などが壊れ、供給が足りなくなる |
| 都市ガス | 揺れの直後 | 安全のため供給を止める。家のメーターも震度5相当以上で自動で止める |
| 水道 | 揺れの直後から | 管や浄水場の被害。非常用発電機のない浄水場は停電で止まる |
| 携帯電話 | 直後(混み合い)・数時間後〜翌日に最大 | 通話の集中。基地局の非常用電源が数時間で切れる |
高層マンションでは、停電で上の階へ水を送るポンプが止まり、断水します。新しい想定は、エレベーターの停止で高層マンションでの生活が難しくなることも挙げています。マンションに住んでいる人は、給水ポンプに非常用電源があるかを管理組合や管理会社に確かめておきます。無ければ、停電だけで断水する前提で水を備えます。
なぜ電気→水道→ガスの順になるのか
順番の差は、壊れた所の直し方と、安全の確認にかかる手間で決まります。
| ライフライン | 戻る速さを決めるもの |
| 電気 | 壊れた所を直す前に、迂回してつなげば先へ送れる |
| 水道 | 地下の管の漏れを1か所ずつ探して直す。水圧が上がらないと、漏れの場所も見つけにくい |
| 都市ガス | 漏れると火災や爆発につながるため、念入りな点検のあとで1軒ずつガスを開ける |
阪神・淡路大震災では、関西電力が壊れた部分を直さずに迂回して、使える電線を次々につなぎました。都市ガスは、管に入り込んだ水や土砂の排出に手間取り、当初の予定の1か月半から大きく遅れています。電力会社が病院や避難所など、どこから順に電気を戻すかは電力復旧の優先順位で詳しく書いています。
過去の地震で戻るまでにかかった日数
阪神・東日本・熊本では、電気は1週間前後で大部分が戻りました。水道と都市ガスは被害の大きさと道路の状態で大きく変わり、道路が壊れた能登半島地震では水道が月単位で延びています。能登では、都市ガスは被害の大きかった地域の外の金沢市などが中心で、1月4日に支障が解消し、電気より早く戻りました。熊本では、熊本市の水道と都市ガスがほぼ同じ日に戻っています。
阪神・淡路大震災(1995年1月17日)
- 電気: 約260万軒が停電。6日後の1月23日に、被災地全域への応急送電が終わりました
- 水道: 2月末に、復旧が難しい地域を除いて仮の復旧が終わりました。最も遅かった神戸市で、全戸に水が戻ったのは4月17日(約3か月後)です
- 都市ガス: 大阪ガスは4月11日に、一部の地域を除いて復旧作業を終えました(発生から約85日)。不在の家を除くすべてへの供給再開は4月20日です。LPガスは1月28日にほぼ100%戻っています
東日本大震災(2011年3月11日)
- 電気: 東北電力の管内で最大約466万戸が停電。3日で約80%、8日で約94%の停電が解消しました
- 水道: 全国で約257万戸が断水しました。4月7日の余震では、一度戻った地域で約24万戸が再び断水しています
- 都市ガス: 仙台市ガス局は約36万戸への供給が止まり、4月16日に避難勧告区域などを除いて開栓の作業を終えました(約5週間後)
熊本地震(2016年4月14日・16日)
- 電気: 最大約48万戸が停電。本震から4日後の4月20日に、復旧が難しい所を除いて高圧の配電線への送電が終わりました
- 水道: 最大約45万戸が断水。熊本市は4月30日に、市の全域へ水を送れるようになりました
- 都市ガス: 最大約11万戸が停止。西部ガスは4月30日に、家屋の倒壊などで再開できない家を除いて供給を再開しました(本震から約2週間後)
能登半島地震(2024年1月1日)
- 電気: 最大約4万戸が停電。1月31日の時点で石川県内に約2,500戸が残り、3月15日に、安全のため電気を使えない家などを除いて戻りました
- 水道: 6県で最大約13万6,000戸が断水。水道の本管が戻ったのは5月31日で、建物が倒れた地域などは除きます(約5か月後)
- ガス: 都市ガスは1月4日に供給の支障が解消しました。被害の大きかった能登地域はLPガスの家が多く、供給面の支障は生じていません
能登では、浄水場などの大きな施設も壊れ、道路や泊まる場所が限られて応援の作業が難航しました。半島や山あいのように道が限られる地域では、図の日数より長く見ておく必要があります。
止まっている間の備え(水・トイレ・調理・電気・連絡)
国の目安は3日分、大規模な災害に備えるなら1週間分の備蓄です。新しい想定では、1週間後もまだ約16%が断水し、約10%の都市ガスが止まっています。その間の水・トイレ・調理は、家の中の備えでまかなうことになります。
水: 1人1日3リットルを、できれば1週間分
飲み水は1人1日3リットルが目安です。4人家族の1週間分なら84リットルで、2リットルのペットボトルで42本になります。トイレを流すなどの生活用水は飲み水とは別に要るので、ふだんから風呂の水を張っておく、ポリタンクに水道水をためておくといった備えを国も勧めています。断水したときの給水所の場所は、住んでいる自治体の防災のページで確かめられます。
トイレ: 携帯トイレを1人1日5回分
断水すると水洗トイレは流せません。集合住宅では排水管が各戸でつながっているので、管が壊れたまま流すと下の階で汚水があふれるおそれがあります。携帯トイレは「1日5個×3日分×家族の人数」が東京都の示す最低限の目安で、4人家族なら60個です。東京都は1週間分を勧めています。
調理: カセットボンベは1人1週間で約6本
都市ガスは戻るのが最も遅く、新しい想定でも約5週間かかります。オール電化の家も、電気が時間帯を区切ってしか使えない間は調理が難しくなります。カセットコンロがあれば温かい食事が作れ、ボンベの目安は1人1週間で約6本です(農林水産省)。ボンベの使用期限は約7年なので、ふだんの料理で使いながら入れ替えます。
電気: 冷蔵庫・スマホ・照明に絞る
太陽光発電のある家は、停電時にパワーコンディショナーを自立運転に切り替えると、日が出ている間は停電用コンセントから電気を使えます。京セラの機器では、コンセント1つあたり最大1,500Wまでです。夜や雨の日も使うなら蓄電池やポータブル電源が要り、要る容量は守りたい家電と日数で決まります。
冷蔵庫の中身が何時間もつかは停電で冷蔵庫は何時間もつ?、守る家電の順番と3日分・7日分の容量は停電の備えは家電の優先順位で決まるで計算しています。
連絡: 携帯がつながらない前提で決めておく
揺れの直後から、通話が集中して携帯はほとんどかかりません。基地局の非常用電源が切れる数時間後から翌日にかけては、つながらない地域が最も広がります。家族との連絡には、災害時に提供が始まるNTTの災害用伝言ダイヤル(171)が使えます。集まる場所と、171に誰の番号で伝言を残すかを先に決めておきます。
復旧の日数から逆算する備えの3ステップ
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1
家の水の出方を確かめる
マンションなら給水ポンプに非常用電源があるかを管理組合に聞きます。無ければ停電だけで断水するので、水の備えを多めにします。
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2
水・携帯トイレ・ボンベを1週間分そろえる
1人あたり水21リットル、携帯トイレ35回分、カセットボンベ約6本が1週間分の目安です。まず3日分から始めても構いません。
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3
電気で守る家電を決める
冷蔵庫・スマホ・照明など、停電中も動かしたい家電を決めてから、ポータブル電源や蓄電池の容量を選びます。
停電の3日間に要る電気の量
【2026年版】防災用ポータブル電源は3日分で何Wh必要?世帯人数別の独自計算
蓄電池で停電を何時間しのげるか
【2026年版】蓄電池は停電時に何時間使える?家電別の独自計算
よくある質問
Q. 下水道はいつから使えますか?
首都直下地震の新しい想定では、直後に最大約200万人(約5%)が下水道を使いにくくなり、1か月後にはほとんどの地域で解消します。上水道が戻っても、下水管や排水管が壊れていればトイレは流せないので、自治体や管理組合の案内を待ってから使います。
Q. LPガスの家は、都市ガスより早く使えますか?
地震によって違います。阪神・淡路大震災では、LPガスは地震の11日後にほぼ100%戻り、都市ガスより大幅に早く使えました。能登半島地震でも、LPガスは供給面の支障が生じていません。東日本大震災では、岩手・宮城・福島で約166万戸のLPガスが止まり、家屋の流出などがあった地域を除いて供給できるようになったのは4月21日でした。
Q. 地震でガスが止まったら、自分で戻せますか?
家のガスメーターが揺れで止めただけなら、ガス臭くないことを確かめたうえで、メーターの復帰ボタンを押して戻せます。日本ガス協会の案内では、約3分待って赤いランプの点滅が消えれば使えます。ガス臭いときは操作をせず、ガス会社に連絡します。
Q. 停電から電気が戻るとき、気をつけることは?
電気が戻ったときに、倒れた暖房器具や傷んだ配線から火が出る通電火災に気をつけます。消防庁は、停電中は電気機器のスイッチを切ってプラグを抜くこと、停電中に家を離れるときはブレーカーを落とすことを挙げています。電気が戻ったあとに煙や異臭に気づいたら、すぐにブレーカーを落として消防に連絡します。