- 太陽光パネル自体は電波を出さない。原因はパワコンの高周波スイッチングノイズ
- 影響範囲は住宅用で20〜30m程度。CISPR11クラスB適合品ならリスクはほぼゼロ
- 障害発生時は①切り分け②施工業者連絡③総務省相談の順で対処する
電波障害の原因はパワコンのスイッチングノイズである
メリット
- CISPR11クラスB適合品(国内主要メーカーのオムロン・パナソニック・ファーウェイ等の現行機種はすべて適合)を選べば電波障害のリスクは極めて低い
- 電波障害が発生しても総務省の各地方総合通信局への相談で電波監視車による現地測定を無料で実施してもらえ、フェライトコア追加(費用1〜3万円)で多くのケースが解決できる
- WiFi(2.4GHz/5GHz帯)はパワコンのノイズ主帯域(数十MHz以下)と周波数帯が大きく異なるため、日常的に使う無線LANへの影響はほぼ発生しない
デメリット・注意点
- パワコンのスイッチングノイズが20〜100kHzの高周波でAMラジオ・地デジ・アマチュア無線に干渉する場合があり、総務省電波監視データでは年間約100件の相談が報告されている
- 住宅用パワコン(4〜6kW)の影響範囲は20〜30mが目安で、DC側ケーブルが長いほどアンテナとして機能し伝導ノイズが遠方まで放射される
- 2012年以前に設置されたパワコンは現行のEMC基準を満たしていない可能性があり、非適合品への対処はパワコン交換(費用20〜30万円)が必要な場合もある
太陽光パネル自体は電波障害を起こしません。原因の大半はパワーコンディショナ(パワコン)内部のスイッチング回路から発生する高周波ノイズです。総務省の電波監視データでは、太陽光発電設備に起因する電波障害の相談は年間約100件報告されています。
パワコンはDC(直流)をAC(交流)に変換する際、20〜100kHzの高周波でスイッチングを行う。この過程で発生する不要電波が、AM/FMラジオ・地上デジタル放送・アマチュア無線・航空無線などに干渉する可能性があります。WiFiへの影響を心配する声も多いが、周波数帯が異なるため影響は限定的です。
電波障害が発生するメカニズム
パワコンからの不要輻射は、主に3つの経路で周囲に伝わる。
1. 伝導ノイズ
パワコンから電力線を通じてノイズが家庭内の配線に伝わる。配線がアンテナの役割を果たし、電波として輻射されます。特にDC側ケーブル(パネルからパワコンまで)が長いほど伝導ノイズの影響は大きくなります。
2. 放射ノイズ
パワコン本体から直接空間に放射される電磁波です。筐体のシールド不良やケーブル接続部の隙間から漏れ出す。設置場所がテレビアンテナやラジオの近くだと影響が顕著になります。
3. 接地不良によるノイズ
パワコンや架台のアース接続が不十分だと、筐体電位が不安定になりノイズが増大します。施工時の接地抵抗値が10Ω以下であることをD種接地工事として確認する必要があります。
実際に報告された電波障害事例4件
国内で実際に確認された代表的な事例を4件紹介します。
事例1:AMラジオへの障害(関東地方)
住宅用5kWシステム設置後、隣家でAMラジオに激しいノイズが発生しました。原因はパワコンのDC側ケーブルがラジオアンテナに近接していたことです。ケーブルにフェライトコアを装着し、ケーブルルートを変更して解決しました。
事例2:地デジ受信障害(九州地方)
パワコン設置位置がUHFアンテナの直下だったため、特定チャンネルにブロックノイズが発生しました。パワコンの移設とアンテナブースターの設置で対処しました。
事例3:アマチュア無線への障害(東北地方)
HF帯(短波)のアマチュア無線で、日中のみS9+のノイズが確認されました。太陽光発電の稼働時間帯と完全に一致しており、パワコンのEMCフィルタ追加で改善しました。総務省の電波監視課が仲介に入った事例です。
事例4:航空無線への影響懸念(中部地方)
空港周辺のメガソーラーで、VHF帯の航空無線への影響が懸念されました。事前調査でCISPR11クラスBの適合機器を使用し、問題は発生しなかりました。空港周辺10km以内では事前の電波環境調査が推奨されています。
電波障害の影響範囲は20〜30mが目安
| 周波数帯 | 主な影響機器 | 障害発生条件 | 主な対策方法 | 対策効果 |
|---|---|---|---|---|
| 中波(AM放送) 535〜1,605kHz |
AMラジオ | DC側ケーブルが長い・パワコンとアンテナが近接 | フェライトコア装着・ケーブルルート変更 | 高い(費用1〜3万円) |
| 短波(HF帯) 3〜30MHz |
アマチュア無線・航空無線 | 接地不良・CISPR非適合品の使用 | D種接地工事の見直し・EMCフィルタ追加 | 高い(費用2〜5万円) |
| VHF帯 30〜300MHz |
FM放送・航空無線(VOR/ILS) | 産業用パワコン(10kW以上)の近接設置 | CISPR11クラスB適合品への交換・パワコン移設 | 中程度(費用20〜30万円) |
| UHF帯 300MHz〜3GHz |
地上デジタル放送(地デジ) | パワコン設置位置がアンテナ直下・接触不良 | アンテナブースター設置・パワコン移設 | 中程度(費用1〜5万円) |
| マイクロ波(WiFi帯) 2.4GHz・5GHz |
WiFiルーター・コードレス電話 | ほぼ影響なし(周波数帯が離れている) | 原則対策不要(WiFi不調は別原因を調査) | —(干渉リスク極めて低) |
※出典:総務省電波監視課・CISPR11(2019年版)・日本アマチュア無線連盟(JARL)障害事例集をもとに編集部が整理。費用は目安であり、機種・規模によって異なる。
住宅用パワコン(4〜6kW)からの不要輻射による影響範囲は、多くの場合20〜30m程度です。ただし以下の条件で範囲が変動します。
- パワコンの出力容量:10kW以上の産業用は影響範囲が50m以上に拡大する場合がある
- 周波数帯:低い周波数ほど遠くまで伝播します。AM放送帯(中波)は影響を受けやすい
- DC側ケーブル長:長いケーブルは効率的なアンテナとして機能し、伝導ノイズを遠方に放射する
- 建物構造:木造住宅はRC造と比べて電波を遮蔽しにくく、影響範囲が広がる
近隣住宅との距離が30m以内の住宅密集地では、設置前にパワコンの設置位置とケーブルルートを慎重に検討すべきです。契約アンペアと太陽光の関係も含め、電気系統全体の設計を考慮する必要があります。
CISPR11適合品なら電波障害はほぼゼロ
国際規格CISPR11(工業・科学・医療用機器の電磁妨害規格)に適合したパワコンを使用すれば、電波障害のリスクは極めて低いです。
CISPR11の2つのクラス
| クラス | 対象 | 許容レベル | 適用場所 |
|---|---|---|---|
| クラスA | 産業用機器 | 緩い(30m地点で規制) | 工業地域向け |
| クラスB | 家庭用機器 | 厳しい(10m地点で規制) | 住宅地向け |
住宅用パワコンはクラスBへの適合が必須です。国内主要メーカー(オムロン、パナソニック、ファーウェイ等)の現行機種はすべてCISPR11クラスBに適合しています。電波障害の報告事例の多くは、古い機種や海外製の非適合品に起因します。
2012年以前に設置されたシステムのパワコンは、現行のEMC基準を満たしていない可能性があります。パワコンの寿命(15〜20年)と合わせて、交換を検討する価値があります。
電波障害が発生した場合の対処5ステップ
電波障害が疑われる場合、以下の5ステップで対処します。
- 1障害の切り分け
パワコンの電源を切って障害が消えるか確認する。日中のみ発生・夜間は消えるなら太陽光発電が原因である可能性が高い。
- 2施工業者への連絡
設置業者に現地調査を依頼する。配線不良や接地不良が原因なら施工保証の範囲内で対応してもらえることが多い。
- 3総務省の電波監視課に相談
施工業者で解決しない場合、各地方総合通信局に相談。電波監視車による現地測定を無料で実施してもらえる。
- 4EMCフィルタの追加
フェライトコアやラインフィルタをAC側・DC側に取り付けて伝導ノイズを抑制する。費用は1〜3万円程度。
- 5パワコンの交換
上記で改善しない場合はCISPR11クラスB適合品への交換を検討する。費用20〜30万円だが根本的な解決になる。
ステップ1:障害の切り分け
太陽光発電システムが原因かどうかを特定します。パワコンの電源を切り、障害が消えるか確認します。日中のみ発生し夜間は消える症状は、太陽光発電由来の可能性が高いです。
ステップ2:施工業者への連絡
設置業者に連絡し、現地調査を依頼します。配線の取り回し不良や接地不良が原因であれば、施工保証の範囲内で対応されるケースが多いです。
ステップ3:総務省の電波監視課に相談
施工業者で解決しない場合、総務省の各地方総合通信局に相談します。電波監視車による現地測定を無料で実施してもらえます。重要無線通信妨害の場合は電波法に基づく行政指導が行われます。
ステップ4:EMCフィルタの追加
パワコンのAC側・DC側にフェライトコアやラインフィルタを追加することで、伝導ノイズを抑制できます。費用は1〜3万円程度です。
ステップ5:パワコンの交換
上記で改善しない場合は、CISPR11クラスB適合品への交換を検討します。交換費用は20〜30万円だが、根本的な解決になります。配線の美観と機能を同時に見直す機会にもなります。
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よくある質問
太陽光パネル自体が電波障害を起こすことはあるか
パネル自体は受動的な半導体デバイスであり、電波を発しません。ただしパネル表面がUHF帯の電波を反射し、テレビアンテナの受信に影響を与えるケースがごくまれにあります。この場合はアンテナの向きを調整するか、ブースターを追加して解決します。
WiFiに影響はあるか
WiFi(2.4GHz/5GHz帯)とパワコンのノイズ(主に数十MHz以下)は周波数帯が大きく異なるため、直接的な干渉はほぼ発生しません。WiFiの不調がある場合は、パワコンではなくルーターの配置や回線品質を先に確認すべきです。
近隣から電波障害のクレームを受けた場合どうするか
まずパワコンの電源を切って症状が改善するか確認します。太陽光が原因と判明した場合は、施工業者と相談のうえフェライトコア追加やパワコン移設で対処します。解決しない場合は総務省の地方総合通信局が仲介に入ることも可能です。
電波障害を理由に設置を拒否されることはあるか
法的に設置を拒否する根拠はありません。ただし管理規約でアンテナ設備への影響を制限しているマンション等では、管理組合の承認が必要になる場合があります。戸建住宅ではCISPR11適合品を使用する限り、問題になることはほぼしません。
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