| 事業者・地域 | 導入車種 | 導入台数 | 航続距離(km) | 充電方式 | CO2削減効果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 京阪バス(大阪府) | BYD K8 | 複数台 | 約250 | 普通充電(夜間) | ディーゼル比約50%削減 |
| Osaka Metro(大阪市) | BYD K9 | 複数台 | 約250〜300 | 普通充電(夜間デポ) | 年間CO2排出量大幅削減 |
| 小田急バス(東京都) | BYD K9 | 複数台 | 約250 | 普通充電 | ディーゼル比約50%削減 |
| 深圳市(中国) | BYD K9・K11等 | 約16,000台(市全体) | 200〜300 | 夜間デポ充電+一部急速 | 年間CO2削減約48万トン以上 |
| ロンドン(英国) | BYD・ADL等 | 約1,000台超 | 200〜280 | 夜間デポ充電 | NOx・PM2.5排出ゼロ(ゼロ・エミッション路線) |
日本のEVバス累計導入は500台を突破——BYDが7割超のシェア
- EVバスは走行コストがディーゼル比で50〜70%削減できるとされ、路線バスでの経済効果が大きい
- 中国BYDを中心に国内外の導入事例が増えており、京都・東京・沖縄で実証・営業運転が進む
- 充電設備の設置コストと夜間の一括充電管理がバス会社導入時の主な課題
日本のEVバス累計導入台数は503台を突破した(2025年度末時点)。BYD JAPANが約7割のシェアを握り、市場を事実上支配している(出典:BYD JAPAN 2025年度実績発表)。
BYDは2030年までに日本国内累計4,000台の納入を目標に掲げており、年間数百台規模への加速を狙う。一方、いすゞが2024年5月に国産初の大型EVバス「エルガEV」を発売し、国内メーカーの反撃が始まりました。日野自動車もトヨタグループの技術を活用したEVバスの開発を進めています。
世界に目を向けると、EVバス市場は2024年の450億ドルから2029年には1,165億ドルに成長する見通しです(CAGR 18〜20%、出典:MarketsandMarkets)。中国・深圳市は2017年に世界初の全バスEV化を達成し、約1.6万台のEVバスが毎日運行しています。欧州でもEU Clean Vehicle Directiveにより新規調達の45%以上をゼロエミッション車とする義務が課せられました。
日本の503台は世界水準から大きく遅れているが、政府の補助金拡充と2050年カーボンニュートラル目標が追い風になりつつあります。2025年以降、複数の自治体が公共交通のゼロエミッション化目標を掲げ始めており、今後5年間で導入ペースが一気に加速する可能性が高いです。
特に2024〜2025年は転機の年です。いすゞ エルガEVの発売で国産メーカーの選択肢が生まれ、BYDも価格戦略を武器に攻勢を強めています。バス事業者にとっては「導入を検討すべき時期」から「具体的な導入計画を立てる時期」へとフェーズが移行しています。
主要EVバスのスペック比較
日本市場で入手可能な主要EVバスのスペックを比較します。価格差と航続距離のバランスが導入判断の鍵です。
| 車種 | サイズ | バッテリー | 航続距離 | 価格(税別目安) |
|---|---|---|---|---|
| BYD J6 | 小型(7m) | 105kWh | 200〜220km | 約1,950万円 |
| BYD J7 | 中型(8.5m) | 192.5kWh | 約250km | 約3,650万円 |
| BYD K8 2.0 | 大型(10.5m) | 314kWh | 約240km | 約3,850万円 |
| いすゞ エルガEV | 大型 | 242kWh | 約360km(定速) | 約6,500万円 |
| ディーゼルバス(参考) | 大型 | — | — | 約2,500万円 |
出典:BYD JAPAN公式カタログ、いすゞ自動車プレスリリース、各社ヒアリング情報
BYD J6——コミュニティバスの定番
全長7mの小型EVバスで、狭い住宅街や観光地のコミュニティ路線に適しています。105kWhバッテリーで200〜220kmの航続距離を実現し、1日1回の夜間充電で都市内路線を十分にカバーできます。乗車定員は約30名で、自治体のコミュニティバスや企業のシャトルバスとして採用が多いです。
1,950万円という価格は補助金(CEV補助金+自治体補助)適用後にディーゼルバスと同等かそれ以下になるケースもあり、導入の心理的ハードルが最も低いモデルです。全国のコミュニティバスでJ6が急速に広がっている理由はこの価格競争力にあります。
BYD J7——中型路線の穴を埋める
全長8.5mの中型バスで、幹線路線には大きすぎるが小型では足りない路線向けです。192.5kWhバッテリーで約250kmを走行できます。価格は約3,650万円。地方都市の主要路線や、都市部の支線路線に適したサイズ感で需要が伸びています。
BYD K8 2.0——都市幹線路線の主力
10.5mの大型バスで、都市部の幹線路線に対応します。314kWhの大容量バッテリーで約240kmを走行でき、早朝から夜間までの1日の運行をカバーします。エアコン使用時は航続距離が20〜30%低下するため、実運用では170〜200km程度と見積もるのが安全です。
価格は約3,850万円で、いすゞ エルガEVの約6割のコストです。この圧倒的な価格競争力がBYDのシェア7割の最大の要因です。中国国内での年間数万台規模の生産によるスケールメリットが、日本市場での価格優位性を支えています。
いすゞ エルガEV——国産大型EVバスの切り札
2024年5月に発売された国産初の大型EVバスです。242kWhバッテリーで定速航続360kmを実現し、BYD K8 2.0(240km)を上回る航続性能を持つ。いすゞの大型バス「エルガ」はディーゼル版で国内シェアトップの実績があり、その電動版として注目度は高いです。
年間生産目標は150台です。価格は約6,500万円とBYDの約1.7倍だが、この価格差をどう評価するかが事業者の判断を分けます。いすゞは全国に200拠点以上のサービス網を持ち、整備士のEV対応研修も進めています。既存のディーゼルエルガと共通部品が多く、整備体制の移行コストが低い点も強みです。
「安さならBYD、安心ならいすゞ」という構図が現時点での市場のコンセンサスです。
注目の導入事例
全国でEVバスの導入事例が急速に増えています。特に先進的な取り組みをまとめました。
京阪バス(京都)——全車EV化を宣言
京阪バスは京都市内の路線を中心にBYD製EVバスを段階的に導入しており、将来的な全車EV化を目指す方針を打ち出しました。京都の狭い市街地や観光地エリアでは、EVバスの静粛性と排気ゼロのメリットが大きいです。ディーゼルバスの排気ガスが古い寺社仏閣に与える影響を低減できるという文化財保護の観点も、京都ならではの導入理由です。
京都議定書採択の地として、脱炭素の象徴的な取り組みという側面も持つ。インバウンド観光客に対する環境先進都市のイメージ発信にも寄与しています。
Osaka Metro——エルガEVで大阪万博を支える
Osaka Metroはいすゞ エルガEVの導入を進めています。2025年の大阪・関西万博に合わせたインフラ整備の一環であり、万博会場(夢洲)へのアクセスバスとしても活用されました。万博開催中は1日数百回の運行をこなし、EVバスの実用性を実証する絶好のショーケースとなりました。
万博後は通常路線に転用し、大阪市内の公共交通のEV化を継続的に推進する計画です。万博のレガシーとしてEVバスの運行ノウハウが蓄積されたことは、今後の全国的な普及に向けた貴重な資産になります。
関西国際空港——万博EVバスの転用計画
関西国際空港では、万博で使用されたEVバスをターミナル間連絡バスとして転用する計画が進んでいます。空港内の短距離・低速走行はEVバスの特性と最も相性が良いです。走行ルートが固定的で、1回の走行距離が短く、車庫での充電時間を確保しやすいためです。
空港ターミナル内はディーゼル排気の問題が以前から指摘されており、EVバスへの転換は空港利用者の快適性向上にも直結します。成田空港でも同様の検討が行われており、全国の主要空港にEVバスが広がる可能性があります。
京都市交通局——市営バスでのEV導入
京都市交通局も市営バスへのEV導入を進めています。京阪バスとは別の事業体として、市内の公共交通のEV化に取り組んでいます。バス運転士不足が深刻化するなか、EVバスの運転のしやすさ(トルクの滑らかさ、振動の少なさ)がドライバーの負担軽減につながるという副次的効果も報告されています。
都営バス——FCバスとの併用戦略
東京都交通局はFC(燃料電池)バスを主軸としつつ、EVバスも併用する二刀流戦略を採っています。水素ステーションの整備が進む都市部ではFCバス、インフラが整わない路線ではEVバスという使い分けです。トヨタ「SORA」などのFCバスは航続距離が長く、長距離路線に向いています。
FCV(燃料電池車)の普及動向と合わせて、EVとFCのどちらが公共交通の主流になるかは今後10年の展開次第です。現時点では「都市内短距離路線はEV、郊外長距離路線はFC」という棲み分けが有力な仮説です。
EVバスのコストメリット——走行コストはディーゼルの半分以下
EVバスの経済性は走行コストに最も顕著に表れます。
EVバスの走行コストは12.2〜27.3円/kmです。ディーゼルバスの走行コスト(14.7〜41.9円/km)と比較すると、1kmあたり2.5〜14.7円安い計算になる(出典:国土交通省「電動バス導入ガイドライン」試算ベース)。
年間走行距離5万kmのバスで試算すると、燃料費(電気代)の差額は年間12.5万〜73.5万円に達します。10年間の累積では125万〜735万円のコスト差です。10台規模のバス事業者なら、10年間で1,250万〜7,350万円の燃料費削減になる計算です。
電気料金は深夜電力契約を活用すれば1kWhあたり15〜20円程度に抑えられます。夜間の車庫で一斉に充電し、翌朝フル充電で出庫するパターンが最も経済的です。充電ロス(5〜15%程度)を考慮しても、ディーゼル燃料費との差は歴然としています。
メンテナンスコストの優位性
EVバスはディーゼルバスと比べて整備項目が大幅に少なくありません。以下はディーゼルバスで必要だがEVバスでは不要になる主な整備です。
- エンジンオイル交換(年4〜6回×数万円)
- 排気系部品(DPF、触媒、マフラー)の点検・交換
- トランスミッションオイル交換
- エアフィルター、燃料フィルターの交換
- クーラントの定期交換
ブレーキパッドも回生ブレーキの効果で摩耗が少なく、交換頻度がディーゼルの半分以下で済む。整備士の工数と部品代の両面でコスト削減効果があります。年間のメンテナンスコストはディーゼルバスの60〜70%程度に抑えられるとの試算があります。
ただしバッテリーの劣化と交換費用は将来のリスクです。大型EVバスのバッテリー交換費用は500万〜1,000万円規模と見込まれており、8〜10年後の交換時期のコストが長期的なTCO(総所有コスト)を左右します。EVの維持費構造を理解したうえでの判断が不可欠です。
CO2削減効果
ディーゼルバスは1台あたり年間約60トンのCO2を排出する(出典:環境省「運輸部門のCO2排出係数」)。EVバスの走行時CO2排出はゼロです。電力の発電時排出を加味しても、日本の電力構成(2024年度)ではEVバスのライフサイクルCO2はディーゼルバスの約40〜50%に抑えられます。
100台のバスをディーゼルからEVに置き換えた場合、年間約3,000〜6,000トンのCO2削減効果があります。これは約1,000世帯分の年間CO2排出量に相当する規模です。自治体の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けて、公共交通のEV化は最も効果の大きい施策の一つです。
騒音削減効果も見逃せません。バス通りの沿線住民にとって、ディーゼルバスのエンジン音は慢性的なストレス要因です。EVバスに置き換えることで、沿線の騒音レベルが大幅に低下します。EVの騒音レベル比較データが示すように、低速域でのEVの静粛性は圧倒的です。バス停付近の住民にとっては生活品質の向上に直結します。
超急速充電技術——東芝SCiBの実力
EVバスの運行上の最大課題は充電時間です。この課題に正面から取り組む技術が登場しています。
- 1路線の走行距離・充電計画を立てる
1日あたりの運行距離とEVバスの航続距離を照合し、深夜充電だけで翌日の運行をカバーできるか確認する。
- 2車庫への充電設備設置を計画する
50〜150kW級の急速充電器を台数分確保するための電力契約容量拡大・設備工事費を試算する。補助金も活用できる。
- 3国・自治体補助金を申請する
国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業」や環境省のEVバス補助金を活用することで初期投資を抑えられる。
東芝のリチウムイオン電池「SCiB」を搭載したバスでは、パンタグラフ式の超急速充電により約10分で必要な電力を補給できます。川崎鶴見臨港バスで実証実験が行われ、ダイヤの折り返し時間内での充電が実証された(出典:東芝プレスリリース)。
パンタグラフ式充電は、バス停や車庫の屋根に設置した充電装置からバス上部のパンタグラフを通じて大電流を流す方式です。ケーブルの抜き差しが不要で、運転士の作業負担がゼロになるメリットもあります。
SCiBの特長は超高速充放電に対する耐久性の高さです。通常のリチウムイオン電池は急速充電を繰り返すと劣化が加速するが、SCiBはチタン酸リチウム(LTO)を負極に使用しており、1万回以上の充放電サイクルでも容量維持率90%以上を保つ。毎日3〜4回の急速充電が前提となるバス運用に最適な特性です。
SCiBのもう一つの利点は極低温での性能安定性です。マイナス30度の環境でも充電可能であり、北海道や東北など寒冷地でのバス運用にも対応できます。寒冷地ではバッテリー性能低下が最大の懸念だが、SCiBはその弱点を技術的に克服しています。
課題はインフラ投資の大きさです。パンタグラフ式充電設備の設置には1基あたり3,000万〜5,000万円規模の投資が必要であり、導入路線の選定にはペイバック期間の慎重な試算が求められます。ただし、高頻度路線(1日50便以上)で導入すれば、充電設備1基あたりのコストを多数のバスで分担できるため、経済性は改善します。
ワイヤレス充電(非接触充電)技術も研究が進んでいます。バス停の路面に埋設した充電コイルから、停車中のバスに電力を送る方式です。乗降時間の30秒〜1分で少量ずつ充電を繰り返すことで、1日の運行を途切れなくカバーする構想です。実用化にはまだ数年かかる見通しだが、将来の充電インフラの本命候補として注目されています。
乗客体験——EVバスは乗り心地が違うのか
EVバスは乗客にとっても従来のディーゼルバスとは異なる体験を提供します。
最も顕著な違いは振動と騒音の少なさです。ディーゼルエンジンの振動が消え、発進停止が滑らかになるため、立ち乗り乗客の安定性が向上します。特に高齢者や妊婦、車椅子利用者にとって、急な振動がないことは安全面で大きなメリットです。
車内の会話もしやすくなります。ディーゼルバスでは走行中に声を張る必要があったが、EVバスでは普通の声量で隣の人と話せます。車内放送の聞き取りやすさも改善され、降車ボタンの押し忘れが減ったという報告もあります。
排気ガスの臭いがないことも乗客にとってプラスです。特にバス停で乗降する際のディーゼル排気の不快感がなくなります。夏場にバス停で待つ際も、停車中のEVバスからは熱い排気が出ないため、バス停周辺の温度上昇が抑えられます。
一方、課題もあります。EVバスの静粛性が高すぎて、バス停で接近に気づかない歩行者がいるとの報告があります。視覚障害者向けの音声案内やAVAS(車両接近通報装置)の適切な運用が求められます。
EVバス導入の課題と現実
EVバスの導入には複数の課題が残されています。楽観的な導入計画だけでなく、現実的なリスクも直視する必要があります。
初期投資の大きさ
EVバスの車両価格はディーゼルバスの1.5〜2.6倍です。BYD K8 2.0(約3,850万円)でもディーゼル大型バス(約2,500万円)の1.5倍、いすゞ エルガEV(約6,500万円)なら2.6倍になります。
CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)で差額の一部は埋められるが、大型EVバスで数百万〜1,000万円規模の補助では差を完全には解消できません。自治体独自の上乗せ補助がある地域もあり、補助金の組み合わせ次第でディーゼルとの価格差を大幅に圧縮できるケースもあります。
中小バス事業者にとって初期投資の負担は依然として重いです。リース方式による導入や、国・自治体の補助金を最大限活用する資金計画が不可欠です。
航続距離と運行計画の制約
現行EVバスの航続距離は200〜360kmです。ディーゼルバスの航続距離(500km以上)と比べると制約が大きく、長距離路線や山岳路線では1回の充電で運行を完結できないケースがあります。冬場の暖房使用時やエアコン全開の真夏は航続距離が20〜30%低下する点も運行計画に織り込む必要があります。EVのエアコン効率の問題はバスでも共通です。
充電インフラの整備負担
車庫での夜間一斉充電には、電力契約の大幅な変更が必要になるケースが多いです。10台のEVバスを同時充電する場合、契約電力を数百kW増やす必要があります。キュービクル(高圧受電設備)の増設や、電力会社との契約変更に数百万〜数千万円の追加投資が発生する場合もあります。
デマンド料金(最大使用電力に基づく基本料金)の急増を避けるために、充電開始時刻をずらすスマート充電制御の導入も検討すべきです。
メーカーリスクへの注意
EVバス市場が拡大するなか、新興メーカーの動向には注意が必要です。EVモーターズ・ジャパンは北九州に工場を計画していたが、社長退任や工場の稼働遅延が報じられています。導入後のアフターサポートやパーツ供給の安定性を十分に確認することが、事業者にとって不可欠な事前調査です。
実績のあるBYDやいすゞと比べ、新興メーカーには追加的なデューデリジェンスが求められます。導入済み事業者へのヒアリングや、工場の稼働実態の確認を怠るべきではありません。
運転士の確保と研修
バス業界全体で運転士不足が深刻化するなか、EVバスの導入は人材確保にもプラスの影響があります。振動・騒音の少ない快適な労働環境は、若年層や女性ドライバーの採用促進につながる可能性があります。EVバスの操作はATの乗用車に近いため、大型二種免許保持者であれば比較的短期間で習熟できます。
ただしEV特有の注意点(回生ブレーキの特性、バッテリー残量管理、緊急時の高電圧安全手順)に関する研修プログラムの整備は必須です。メーカー主催の研修に加え、社内でのOJT体制も構築しておく必要があります。
バッテリーのセカンドライフ活用も視野に入れたい。EVバスのバッテリーは8〜10年の車載使用後も容量が70〜80%程度残っていることが多いです。この使用済みバッテリーを定置型蓄電池として再利用する取り組みが始まっています。バス車庫の太陽光発電と組み合わせ、充電の電力源として活用すれば、電力コスト削減と循環型ビジネスモデルの構築が同時に実現できます。
世界のEVバス市場——日本の立ち位置
世界のEVバス市場は急成長しており、日本の503台は小さな数字にとどまる。
中国は2024年時点で都市バスの約80%をEV化しており、深圳市は2017年に世界初の全バスEV化を達成しました。約1.6万台のEVバスが毎日運行している(出典:深圳市交通運輸局)。
欧州ではEU Clean Vehicle Directive(クリーン車両指令)により、公共調達バスのゼロエミッション車比率が段階的に引き上げられています。2025年以降、新規調達の45%以上をゼロエミッション車とする義務が各国に課せられました。
日本の503台は世界市場から見ると発展途上だが、2030年までの政府目標とバス事業者の意欲的な導入計画を考えると、今後5年間で1,000台規模への拡大は十分に達成可能です。BYDの4,000台目標が実現するかどうかが、市場拡大のペースを測るバロメーターになります。
日本のEVバス導入が遅れている最大の理由は、ディーゼルバスの信頼性の高さと事業者の保守的な投資判断です。バス事業者は公共交通の安定運行を最優先するため、実績の少ない技術への切り替えには慎重にならざるを得ません。中国や欧州は政策的な強制力(補助金+規制の組み合わせ)でEV化を加速させたが、日本は事業者の自主的判断に依存する部分が大きいです。
運転士から見たEVバス——操作性と労働環境
EVバスの導入は運転士の労働環境にも変化をもたらしています。
EVバスのモーターは低速トルクが太く、発進が非常にスムーズです。ディーゼルバスのようにクラッチ操作やギアチェンジが不要(ATの場合も変速ショックがない)で、運転の疲労が大幅に軽減されます。渋滞の多い都市路線では、この差が1日の終わりの疲労度に顕著に表れるという報告があります。
回生ブレーキの効きが良いため、フットブレーキの使用頻度が減る。足首への負担が軽くなり、長時間運転による足のむくみや痛みが改善されたという声もあります。
車内の振動・騒音が少ないことで、運転中の集中力が持続しやすい。ディーゼルエンジンの常時振動は気づかないうちに疲労を蓄積させるが、EVバスではそのストレスから解放されます。
EVバス特有の注意点も存在します。回生ブレーキの効きがディーゼルと異なるため、慣れるまでに数日〜数週間の習熟期間が必要です。バッテリー残量の管理もディーゼルの燃料残量管理とは異なるスキルが求められ、メーカーや事業者による研修プログラムの整備が進んでいます。
EVバス導入を検討する事業者が確認すべきポイント
EVバスの導入は事業者にとって中長期の経営判断です。以下のチェックポイントを整理しました。
路線適性の評価
- 1日の走行距離が航続距離の70%以内に収まるか(冬場・夏場の電力消費増を考慮)
- 路線の高低差——山岳路線ではバッテリー消費が30〜50%増加する場合がある
- ダイヤの折り返し時間——充電に30分〜1時間確保できるか
充電インフラの計画
- 車庫での夜間充電設備(普通充電200V×複数台)の整備コスト
- 急速充電器の設置場所と電力容量の確認——高出力充電器はキュービクル増設が必要な場合がある
- 電力契約の見直し——デマンド料金の急増を避けるためのピーク管理
経済性の試算
- 補助金適用後の実質購入価格と資金調達方法
- 走行コスト削減額のシミュレーション(年間走行距離×コスト差)
- バッテリー交換時期と費用の見積もり(8〜10年後を想定)
- TCO(総所有コスト)比較——15年間でディーゼルと逆転するかの試算
サプライヤーの信頼性
- メーカーの日本国内サービス拠点数とパーツ供給体制
- 既存導入事業者からの評判とトラブル事例の聴取
- 車両保証期間とバッテリー保証条件の確認
急速充電規格の最新動向や充電ロスの実態も踏まえ、まずは1〜2台の小規模導入からスタートし、運用データを蓄積してから本格導入に移行する「スモールスタート戦略」を推奨します。
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EVバスを導入するメリット
- 走行コストはディーゼルバス比で大幅に削減でき、電気代によってはランニングコストが半分以下になるケースがある
- 走行時のCO2排出がゼロで、再生可能エネルギー電力を使えば充電時も含めて実質ゼロエミッション運行が実現できる
- エンジンがないため低騒音・低振動で乗客の快適性が向上し、停留所付近の住民への騒音も低減できる
- 東芝SCiB技術の超急速充電対応機種では折り返しの短時間充電が可能で、路線バスの運行効率に影響しない
EVバス導入のデメリット・注意点
- 車両購入価格がディーゼルバスの2〜3倍になることが多く、初期投資の回収には長期の運行計画が必要
- 1充電あたりの航続距離に限界があり、長距離路線や山岳路線では充電インフラの整備と運行計画の見直しが必要
- 国内累計503台というまだ少ない導入実績から、故障時の部品調達やメンテナンス体制が課題として残っている
- BYDが国内シェア7割超を占めており、海外メーカー依存によるサプライチェーンリスクと補修部品の調達性に留意が必要
よくある質問
EVバスはディーゼルバスより本当に安く運用できるか?
走行コストは1kmあたり2.5〜14.7円安いです。年間5万km走行なら12.5万〜73.5万円の燃料費削減になる(出典:国土交通省試算ベース)。ただし車両価格が1.5〜2.6倍高いため、TCOで逆転するには10〜15年の運用が必要です。
冬場や夏場の航続距離低下はどの程度か?
暖房や冷房使用で航続距離は20〜30%低下します。特に冬場のヒーター使用はバッテリー消費が大きく、寒冷地では運行計画に余裕を持たせる必要があります。
BYDの品質やアフターサービスは信頼できるか?
日本累計503台の納入実績があり、京阪バスやOsaka Metroなど大手事業者が継続導入していることが品質の裏付けです。BYD JAPANは日本国内にサービス拠点を構えており、パーツ供給体制も整備されつつあります。
いすゞ エルガEVとBYD K8 2.0はどちらを選ぶべきか?
価格重視ならBYD K8 2.0(約3,850万円)、航続距離とアフターサポート重視ならいすゞ エルガEV(約6,500万円)です。いすゞは国内ディーラー網が充実しており、既存のバス整備体制をそのまま活用できる強みがあります。
EVバスの補助金はどのくらい出るか?
CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)により、車両価格の一部が補助されます。補助額は車種や年度により変動するが、大型EVバスで数百万〜1,000万円規模の補助が出た実績がある(出典:次世代自動車振興センター)。自治体独自の上乗せ補助がある地域もあるため、必ず確認すべきです。
