2026年度のFIT(固定価格買取制度)における住宅用太陽光発電の売電価格は、最初4年間が24円/kWh、5~10年目が8.3円/kWhの二段階設定です(経済産業省・資源エネルギー庁 2026年3月公表)。2025年前期の15円/kWhから大幅に引き上げられた背景には、初期投資の回収を早める「初期投資支援スキーム」があります。
2012年の制度開始時(42円/kWh)から毎年下がり続けてきた売電価格が、2025年10月から大きく転換しました。ただし10年間の平均単価は14.58円/kWhと旧来の15円より低く、「価格が上がった」のは前半4年間のみという点が重要です。この仕組みを理解せずに投資判断をすると、期待した収益とのギャップが生じます。
本記事では全区分の売電価格一覧、2012年からの14年間価格推移表、住宅用5kW・7kW・10kW別の10年間売電収入シミュレーション(独自試算)、FIT申請期限の一覧、卒FIT後の出口戦略まで整理しています。
2026年度の太陽光発電売電価格(区分別一覧)
2026年度(令和8年度)のFIT売電価格は、システムの規模と設置方法によって4つの区分に分かれています。住宅用から大規模産業用まで、それぞれ異なる価格体系が設定されています。
| 区分 | 容量 | 売電価格(前半) | 売電価格(後半) | 買取期間 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅用(屋根設置) | 10kW未満 | 24円/kWh(1~4年目) | 8.3円/kWh(5~10年目) | 10年間 |
| 産業用(屋根設置) | 10kW以上 | 19円/kWh(1~5年目) | 8.3円/kWh(6~20年目) | 20年間 |
| 地上設置(低圧) | 10kW以上~250kW未満 | 9.9円/kWh(均一) | — | 20年間 |
| 地上設置(高圧) | 250kW以上 | FIP入札制 | — | — |
住宅用(10kW未満)の二段階価格の仕組み
住宅用太陽光発電(10kW未満)の売電価格は、認定取得後の経過年数によって単価が変わります。1~4年目が24円/kWh、5~10年目が8.3円/kWhです。10年間の加重平均は(24円×4年+8.3円×6年)÷10=約14.58円/kWhとなります。
10年間の平均売電単価は約14.58円/kWh。2025年前期の均一15円/kWhより0.42円/kWh低いことになります。新制度の利点は「総収入の増加」ではなく、「初期4年間の収入が増えて投資回収が早まる」点にあります。出典:資源エネルギー庁「買取価格・期間等」
産業用屋根設置(10kW以上)と地上設置型の区分
産業用屋根設置型(10kW以上)は初期5年間が19円/kWh、6~20年目が8.3円/kWhです。買取期間は20年間で、住宅用の10年と比べて長期の収益モデルとなります。
地上設置型(10kW以上)は2026年度がFIT最終受付年度です。2027年度以降は地上設置型の新規FIT認定が終了します。現在検討中の場合は申請期限への注意が必要です。
FIT売電価格の推移|2012年~2026年度の14年間完全版
FIT制度は2012年7月に開始されました。当初42円/kWhだった住宅用売電価格は、太陽光パネルの設置コスト低下に連動して毎年引き下げられてきました。2025年10月からの二段階価格導入により、単純な下落トレンドに変化が生じています。
| 年度 | 住宅用(10kW未満) | 産業用(10kW以上地上) | 主な制度変更 |
|---|---|---|---|
| 2012年 | 42円/kWh | 40円/kWh | FIT制度開始(7月) |
| 2013年 | 38円/kWh | 36円/kWh | — |
| 2014年 | 37円/kWh | 32円/kWh | — |
| 2015年 | 35円/kWh | 29円/kWh | — |
| 2016年 | 33円/kWh | 24円/kWh | — |
| 2017年 | 28円/kWh | 21円/kWh | 改正FIT法施行 |
| 2018年 | 26円/kWh | 18円/kWh | — |
| 2019年 | 24円/kWh | 14円/kWh | — |
| 2020年 | 21円/kWh | 12円/kWh | — |
| 2021年 | 19円/kWh | 11円/kWh | FIP制度開始 |
| 2022年 | 17円/kWh | 10円/kWh | — |
| 2023年 | 16円/kWh | 9.5円/kWh | — |
| 2024年 | 16円/kWh | 9.2円/kWh | — |
| 2025年前期 | 15円/kWh | 8.5円/kWh | — |
| 2025年10月~ | 24円→8.3円(二段階) | 19円→8.3円(二段階) | 初期投資支援スキーム開始 |
住宅用の売電価格は認定を受けた年度の価格が10年間固定されます。2025年10月1日以降に認定を取得した場合のみ二段階価格が適用されます。2025年9月以前の認定は均一15円/kWhが10年間継続します。再エネ賦課金との関係については再エネ賦課金とは何か・2026年最新解説も参照してください。
「初期投資支援スキーム」の仕組みと背景
2026年度FIT制度の核心は「初期投資支援スキーム」です。従来の均一買取価格から二段階価格へ変更された理由は、政府の太陽光普及目標と密接に関連しています。
なぜ売電価格が一時的に上がったのか
政府の「GX実現に向けた基本方針」では、2030年までに新築住宅の60%に太陽光発電を搭載する目標が掲げられています。太陽光パネルの設置コストは2012年の約80万円/kWから2026年には約15~25万円/kWまで低下しましたが、初期費用の大きさが依然として普及の障壁となっています。
「初期投資支援スキーム」は、導入初期の4年間に高い売電収入を確保することで、ローン返済や投資回収を早めやすくする設計です。売電収入が高い時期と住宅ローン返済期間が重なることで、家計への実質的な負担が軽減されます。
- 初期4年間の売電収入が増え、投資回収期間が短縮される
- 5kWシステムなら初期4年間に毎年約72,000円の売電収入を確保できる
- 住宅ローン返済期間中の収入が増え、資金計画が立てやすい
- 補助金(子育てグリーン住宅支援事業等)との併用も基本的に可能
- 10年間の総売電収入は旧制度(15円均一)より少ない(平均14.58円/kWh)
- 5~10年目の売電収入が大幅に減少(5kWシステムで年間24,900円まで低下)
- 5年目以降の収益低下に備えた蓄電池戦略の設計が必要になる
2026年度FIT制度の申請要件
初期投資支援スキームを含む2026年度FIT認定を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 屋根設置型太陽光発電であること(地上設置型は初期投資支援スキーム対象外)
- 住宅用(10kW未満)または産業用屋根設置(10kW以上)であること
- 再エネ特措法に基づく事業計画認定の申請を期限内に完了させること
- 系統連系(電力会社への接続)の申込みを認定申請前に完了させること
- 認定申請はFIT申請ポータルから電子申請で行うこと
2026年版・10年間売電収入シミュレーション(独自試算)
住宅用太陽光発電(10kW未満)を2025年10月以降に認定取得した場合の10年間売電収入を、システム容量別に試算しました。旧制度(2025年前期・15円均一)との差額も示しています。
①1kWあたりの年間発電量:1,000kWh(日本の平均日射量・経産省固定費算定委員会標準値)。②自家消費率40%・売電率60%(余剰買取の一般的な住宅モデル)。③売電価格:1~4年目 24円/kWh、5~10年目 8.3円/kWh(2026年度FIT余剰買取)。④パネル劣化は考慮しない(保守的試算)。
| 項目 | 5kWシステム | 7kWシステム | 10kWシステム |
|---|---|---|---|
| 年間発電量 | 5,000kWh | 7,000kWh | 10,000kWh |
| 年間売電量(60%) | 3,000kWh | 4,200kWh | 6,000kWh |
| 1~4年目・年間売電収入 | 72,000円 | 100,800円 | 144,000円 |
| 5~10年目・年間売電収入 | 24,900円 | 34,860円 | 49,800円 |
| 10年間の総売電収入 | 437,400円 | 612,360円 | 874,800円 |
| 旧制度(15円均一)との差 | -12,600円 | -17,640円 | -25,200円 |
新FIT制度(24円→8.3円)の10年間総収入は旧制度(15円均一)より少なくなります。ただし前半4年間の収入は大幅に増えるため、投資回収の観点では有利です。5~10年目の売電収入が大幅に減少するため、「5年目以降は蓄電池で自家消費を増やして電気代節約に転換する」戦略との組み合わせが有効です。
【2026年版】太陽光発電は売電と自家消費どっちが得?|10年間収支の独自試算と判断フロー
FIT申請期限と手続きの流れ
2026年度FITの認定を取得するには、区分ごとの申請期限を守る必要があります。住宅用の場合、施工会社が申請を代行するのが一般的ですが、期限の把握は施主自身も行うことが重要です。
| 区分 | 認定申請期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 住宅用(10kW未満) | 2027年1月5日 | 余剰売電・住宅屋根設置 |
| 産業用屋根設置(10kW以上) | 2026年12月11日 | 屋根設置型事業用 |
| 地上設置(10kW以上) | 2026年3月31日(終了) | 最終受付年度・FIT終了 |
出典:資源エネルギー庁「2026年度中の再エネ特措法に基づく認定の申請にかかる期限日について」(2026年4月1日)
認定申請期限は「申請書出力済み」状態での完了が条件で、例外なく適用されます(災害等の場合も延長なし)。電力会社への系統連系申込みが認定申請の前提となるため、実質的な準備開始は申請期限の2~3ヶ月前が目安です。
よくある質問(FAQ)
Q:2025年10月以前に認定を取得した場合、売電価格は変わりますか?
変わりません。FITは認定取得時の価格が10年間固定されます。2025年前期(2025年4月~9月)に認定を取得した場合は、均一15円/kWhが10年間適用されます。2025年10月1日以降に認定を取得した場合のみ、初期投資支援スキームの二段階価格(24円→8.3円)が適用されます。
Q:卒FIT後の売電価格はいくらですか?
卒FIT後(10年間のFIT期間終了後)の売電価格は、電力会社が設定する相場に依存します。現状では大手電力会社の卒FIT買取価格は6~10円/kWhが一般的です(東京電力エナジーパートナー:8.5円/kWh、関西電力:8円/kWh、2026年5月時点目安)。卒FIT後の選択肢については卒FIT後の選択肢を徹底比較した記事で詳しく解説しています。
Q:FITとFIPの違いは何ですか?
FIT(固定価格買取制度)は電力会社が固定価格で余剰分を買い取る制度です。FIP(フィード・イン・プレミアム)は市場価格にプレミアムを上乗せする制度で、主に大規模太陽光(入札対象・500kW以上が中心)に適用されます。住宅用(10kW未満)はFIT一択で、FIPは選択できません。
Q:蓄電池を設置すると売電額はどう変わりますか?
蓄電池を設置してもFITの売電価格自体は変わりません。ただし、蓄電池で夜間に充電した電力を自家消費することで電気料金の節約効果が生まれます。5~10年目に売電単価が8.3円/kWhに下がった後は、「余剰電力を売電する(8.3円)よりも蓄電して自家消費する(電気料金単価31円/kWh相当を節約)」ほうが経済メリットが大きくなります。太陽光発電+蓄電池のセット価格と補助金も合わせて確認することをおすすめします。
Q:2026年度FITの売電価格は途中で変更されますか?
認定取得後は価格が固定されるため、変更されません。2025年10月1日以降に認定を取得した場合は、1~4年目が24円/kWh、5~10年目が8.3円/kWhが10年間の取り決めとして確定します。市場の電力価格や電気料金単価の変動に左右されない点がFITの特徴です。
Q:2028年以降もFIT制度は継続しますか?
住宅用太陽光(10kW未満)については2027年度まで継続が確定しており、2028年以降の詳細は2026~2027年度の政策議論で確定する予定です。経産省の方針では「市場自立化」を目指しており、長期的にはFIT依存から脱却する方向性が示されています。地上設置型(10kW以上)は2026年度がFIT最終年度で、2027年度以降の新規認定は終了します。
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今すぐFIT認定申請の準備を開始する
住宅用の申請期限は2027年1月5日ですが、系統連系申込みが認定申請の前提となるため、実質的な準備開始は半年以上前が目安です。施工会社への見積もり・比較は複数社に同時依頼するのが基本です。
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5年目以降の自家消費戦略を事前に設計する
5~10年目の売電単価は8.3円/kWhに下がります。この時期に向けて蓄電池導入を計画することで、売電(8.3円)より割高な電気料金(30~31円/kWh)を節約する自家消費戦略に転換できます。太陽光+蓄電池のセット購入なら補助金も活用しやすくなります。
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卒FIT後の出口戦略を5~6年目から検討する
10年間のFIT期間終了後は、余剰売電(6~10円/kWh)、蓄電池自家消費、V2H活用の3択から選択することになります。EVの有無や電気料金プランによって最適解が変わるため、5~6年目頃から次の戦略をシミュレーションすることをおすすめします。
最新の売電価格・申請情報は資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」で確認できます。
