停電した冷蔵庫の中身を守れる時間は、ドアを閉じたままでも2〜3時間しかありません。冷凍室はもう少し粘り、きっちり詰まっていれば半日から丸1日が目安です。ところが内閣府が示す大規模地震時の電気の復旧目標は6日、時間にすると144時間あります。冷蔵室の保冷2〜3時間で埋められるのは、そのうちわずか2.1%です。停電の長さによって取るべき行動は「開けずに我慢する」か「電源を確保する」かに割れます。境目は停電開始から3時間、そして12時間です。
停電した冷蔵庫が冷えを保つ時間【条件別早見表】
冷蔵室は2〜3時間、冷凍室は満杯で半日から丸1日が保冷時間の目安です。パナソニックが公開している停電時の冷蔵庫の扱いでも、冷蔵室は2〜3時間程度、冷凍室は半日から丸1日程度としています。区画ごとに持ち時間が大きく違うため、停電中に守るべき優先順位も変わります。
| 庫内の区画 | 保冷時間の目安 | 前提条件 | 時間を縮める要因 |
|---|---|---|---|
| 冷蔵室 | 2〜3時間 | 停電時に庫内が十分冷えている/ドアを開けない | ドアの開閉、室温の高さ、庫内が空に近い |
| 冷凍室(きっちり詰まっている) | 半日〜丸1日 | −18℃以下で凍結済み/ドアを開けない | すき間が多い、半解凍の食品が混ざっている |
| 冷凍室(半分以下) | 満杯時よりも短い | 蓄えている冷熱が量に比例して減る | 詰まり具合の少なさがそのまま効く |
| 野菜室 | 冷蔵室に準じる | 設定温度が冷蔵室より高い区画 | もともと温度が高いぶん余裕が小さい |
| 製氷皿・自動製氷 | 数時間 | 氷が溶けると水漏れにつながる | 停電が長引くほど床の水濡れリスクが上がる |
保冷時間は「停電の瞬間に庫内が設定温度まで冷えていること」と「停電中にドアを開けないこと」を前提にした値です。夏場に室温が30℃を超える台所では、外から入る熱が増えるため目安より短くなります。停電の直前に買い物から帰って常温の食材を入れた直後なら、その食材が庫内の熱源になります。
冷凍室が長持ちする理由|持ち時間は詰まり具合にほぼ比例する【独自計算】
冷凍室が冷蔵室より長く持つのは、凍った食品が溶けるときに大量の熱を吸い取るからです。氷が水に変わるあいだ温度は0℃から動かず、その間ずっと外から入ってくる熱を食べ続けます。この性質を数値に置き換えると、冷凍室の持ち時間が「何がどれだけ入っているか」で決まる理由がはっきりします。
冷凍食品1kgが吸ってくれる熱は約372kJ
食品を水分主体とみなして、−18℃の冷凍食品が溶け始めるまでに吸収できる熱量を積み上げます。氷の比熱は2.1kJ/(kg・K)、氷が水に変わるときの融解潜熱は334kJ/kgという物理定数を使います。
| 段階 | 計算式 | 1kgあたりの吸熱量 |
|---|---|---|
| −18℃から0℃まで温度が上がる(顕熱) | 2.1kJ/(kg・K) × 18K | 37.8kJ |
| 0℃で氷が水に変わる(潜熱) | 334kJ/kg | 334kJ |
| 合計 | 37.8 + 334 | 約372kJ |
| 参考:冷蔵室の食品が5℃から10℃になるまで | 4.2kJ/(kg・K) × 5K | 21kJ |
冷凍食品1kgが吸える熱は約372kJ、冷蔵室の食品1kgは約21kJです。冷凍室の中身は冷蔵室の中身のおよそ18倍の熱を受け止められます。冷蔵室が2〜3時間で力尽きるのに冷凍室が半日以上持つのは、この差が理由です。
食品の成分を水と近似し、氷の比熱2.1kJ/(kg・K)・水の比熱4.2kJ/(kg・K)・融解潜熱334kJ/kgを使いました。実際の冷凍食品は水以外の成分を含むため、吸熱量はこの値の前後にばらつきます。庫内へ入ってくる熱の量は機種と設置環境で変わりますので、この計算で出せるのは「何時間もつか」ではなく「量が変われば持ち時間がどう変わるか」の比率です。
冷凍室が半分以下なら持ち時間も約半分になる
庫内に入ってくる熱の量が同じなら、持ち時間は中身の重さにほぼ比例します。冷凍室に10kg入っていれば約3.7MJ、5kgなら約1.9MJの熱を吸い取れる計算です。満杯で丸1日持つ冷凍室は、中身が半分になれば半日程度まで縮みます。パナソニックが「冷凍室はきっちり詰めて収納する」と案内しているのは、この比例関係があるためです。
冷凍室にすき間があるときは、水を入れたペットボトルを凍らせて詰めておくと、そのまま保冷剤として働きます。1本500mLで約186kJぶんの吸熱能力が増える計算です。
停電からの経過時間別にやること
停電中の行動は、経過時間で3段階に分かれます。3時間までは何もしないことが最善で、3時間を超えたら食べる順番を決め、12時間を超えたら電源の確保か廃棄の判断に移ります。
| 経過時間 | 庫内の状態 | やること | やってはいけないこと |
|---|---|---|---|
| 0〜3時間 | 冷蔵室はまだ冷えている | ドアを閉じたまま触らない/電力会社の情報で復旧見込みの確認 | 中身の確認のために開ける/クーラーボックスへ移し替える |
| 3〜12時間 | 冷蔵室の温度が上がり始める | 傷みやすい生鮮食品から加熱調理/冷凍室の食品を冷蔵室へ移して保冷剤代わりに | 冷凍室を何度も開ける |
| 12〜24時間 | 冷凍室にも影響が出る | ポータブル電源や蓄電池があれば冷蔵庫へ接続/半解凍の食品は加熱して消費 | いったん溶けた食品を再凍結する |
| 24時間以降 | 庫内温度は室温に近づく | 常温で傷む食品は廃棄/復旧後は1時間ほど待ってから通電 | においや見た目で判断がつかない食品を口にする |
停電の直後に中身をクーラーボックスへ移す行動は、冷蔵庫のドアを長時間開けることになるため庫内の冷気を一気に失います。移し替える価値があるのは、氷や保冷剤を十分に用意できていて、しかも停電が長期化すると分かっている場合だけです。判断がつかない段階では閉じたままにしてください。
冷蔵庫を停電中も動かすには何Wh必要か【独自計算】
400L級の冷蔵庫を1日動かし続けるには、ポータブル電源の定格容量で約706Whが必要です。当サイトが冷蔵庫の電気代で使っている実測ベースの値と、蓄電池の持ち時間計算で共通化している実効係数0.85から算出しました。
| 項目 | 値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 冷蔵庫(400L級)の実稼働時の消費電力 | 100W | 当サイトの冷蔵庫の電気代記事の年間消費電力量からの換算値 |
| 1日あたりの実稼働時間 | 6時間 | 庫内が設定温度に達すると圧縮機が止まる間欠運転のため |
| 1日の消費電力量 | 600Wh | 100W × 6時間 |
| 実効係数 | 0.85 | 定格容量のうち実際に取り出せる割合(全記事共通) |
この4つの値から、必要な定格容量を停電日数ごとに逆算します。式は「1日の消費電力量 × 日数 ÷ 0.85」です。
| 停電の長さ | 必要な電力量 | 必要な定格容量 | 電気代に換算すると |
|---|---|---|---|
| 1日 | 600Wh | 約706Wh | 約18.6円 |
| 2日 | 1,200Wh | 約1,412Wh | 約37.2円 |
| 3日 | 1,800Wh | 約2,118Wh | 約55.8円 |
| 6日(電気の復旧目標) | 3,600Wh | 約4,235Wh | 約111.6円 |
600Wh/日は当サイトが停電時の試算で共通して使っている値です。400〜500L級の年間消費電力量271〜350kWhから1日あたりに割り戻すと744〜960Whとなり、この表よりも大きくなります。扉の開閉が多い家庭や真夏の高室温では圧縮機の稼働率が上がりますので、余裕をみるならこの上振れ側の帯で容量を選んでください。年間消費電力量からの逆算は冷蔵庫の電気代の記事に容量別で載せています。
電気代の換算には、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める目安単価31円/kWhを使いました。冷蔵庫を6日間動かし続けても、電気代に直せば112円ほどです。
1泊分の停電に備えるだけなら定格1,000Wh級で足ります。3日分まで見るなら定格2,000Wh級が必要です。復旧目標6日を冷蔵庫だけで埋めようとすると定格4,235Wh級となり、家庭用ポータブル電源の最上位帯に入ります。用途別の容量の選び方はポータブル電源の容量ガイドで詳しく計算しています。
冷蔵庫を動かすための電気そのものは、金額でみればごくわずかです。判断を左右するのは電気代ではなく、電源装置を持っているかどうかだけです。
保冷で粘るか、電源を確保するか【判断の分かれ目】
停電が12時間以内で収まる見込みなら、ドアを閉じたまま粘るほうが合理的です。12時間を超える見込みなら、電源の確保か食材の消費・廃棄へ切り替えます。それぞれの向き不向きを整理します。
- 費用がまったくかかりません
- 冷凍室が満杯なら丸1日近く持ちこたえます
- 短時間の停電では最も確実な方法です
- 復旧見込みが立っている場合に向きます
- 3日分で定格2,000Wh級の機器が必要です
- 本体の購入費が数万円から十数万円かかります
- 停電が起きてからでは調達できません
- 災害停電のように復旧が読めない場面で価値が出ます
- 停電の原因が落雷や設備事故なら、数時間で復旧する可能性が高いため保冷で粘ります。
- 地震や台風で広域が停電しているなら、電気の復旧目標6日を前提に電源確保へ動きます。
- 冷凍室が満杯なら、判断を12時間後まで先送りできます。
- 冷凍室にすき間が多いなら、6時間を目安に食べる順番を決めます。
- 集合住宅で断水も同時に起きているなら、調理より保存の効く食品を優先します。
停電の広がり方と復旧の順序は、電気・ガス・水道の復旧順番と電力復旧の優先順位で数値をまとめています。冷蔵庫の判断は、この復旧見込みとセットで決めてください。
停電前にやっておく冷蔵庫の備え
冷凍室は詰めて、冷蔵室は7割にする
冷凍室は食品や保冷剤ですき間を埋めるほど保冷時間が伸びます。冷蔵室は逆に、7割程度に抑えて冷気が回るようにしておきます。詰め込みすぎた冷蔵室は普段の消費電力も増えるため、平常時の電気代の面でも効きます。
ごはんやお茶を凍らせて保冷剤の在庫にする
市販の保冷剤を買い足さなくても、小分けにしたごはんや水筒のお茶を冷凍しておけば同じ役割を果たします。停電が起きたら冷凍室から冷蔵室へ移し、冷蔵室の温度上昇を遅らせます。溶けたあとはそのまま食べられる点が、保冷剤にはない利点です。
電源装置の置き場所と接続先を決めておく
ポータブル電源を持っていても、停電のさなかに延長コードを探すことになれば冷気を失います。冷蔵庫のプラグをどこへ差し替えるかを平時に一度試しておいてください。ポータブル電源と据置型の蓄電池は使いどころが違いますので、ポータブル電源と蓄電池の違いで持ち時間を比べたうえで選びます。
復旧後にすぐ電源を入れると、同じ地域で一斉に電流が流れて再び停電する原因になります。1時間ほど待ってからプラグを差し、庫内の水漏れがないかを先に確認してください。復旧の流れは東京電力の停電復旧の案内にも掲載されています。
よくある質問
停電したら冷蔵庫のプラグは抜くべきですか
短時間の停電なら抜く必要はありません。長時間の停電が確定している場合や、地震で冷蔵庫が動いた形跡がある場合は抜いてください。復旧時の電圧変動から基板を守る効果があります。抜いた場合は、復旧から1時間ほど待って差し直します。
いったん溶けた冷凍食品を凍らせ直しても大丈夫ですか
再凍結は避けてください。溶ける過程で食品の細胞が壊れ、水分とともにうま味が流れ出ます。品質の劣化に加えて、溶けている間に温度が上がった状態が続くため衛生面でも不利です。半解凍で済んでいるうちに加熱調理して食べ切る判断が安全です。
停電中に冷蔵庫が壊れることはありますか
停電そのもので壊れることはほとんどありません。注意が必要なのは復旧の瞬間です。同じ地域の家電が一斉に起動して電圧が不安定になるため、この時間帯に負荷をかけないようにします。自動製氷の氷が溶けて床が濡れると、感電や転倒の原因にもなりますので、復旧前に床を確認してください。
ポータブル電源で冷蔵庫は本当に動きますか
動きます。確認すべきなのは容量ではなく定格出力です。冷蔵庫の圧縮機は起動の瞬間に定格の数倍の電力を必要としますので、実稼働100Wの機種でも定格出力300W以上の機器を選びます。必要な容量は1日あたり約706Whで、3日分なら約2,118Whです。
冷蔵庫の中身はいくらぶん入っていますか
金額は家庭によって差がありますが、冷凍室に肉や魚をまとめ買いしている家庭では数千円から1万円を超えます。冷蔵庫を3日間動かし続けるための電気代は約56円ですから、電源装置を持っているかどうかで守れる金額が変わります。日常の冷蔵庫の電気代は容量別・年式別の比較で確認できます。
停電から冷蔵庫の中身を守る3つのアクション
-
冷凍室のすき間を埋める
凍らせたペットボトルや小分けのごはんで冷凍室を満たします。1kgあたり約372kJの吸熱能力が加わり、持ち時間がそのぶん伸びます。冷蔵室は7割までに抑えます。
-
停電の長さを想定して必要容量を決める
1日なら約706Wh、3日なら約2,118Whが冷蔵庫だけの必要量です。照明やスマートフォンの充電を足す場合は、その分を上乗せして機種を選びます。
-
接続先を平時に一度試す
冷蔵庫のプラグをポータブル電源へ差し替える動作を、停電前に一度やっておきます。延長コードの長さと定格出力の確認まで済ませれば、停電当日に迷いません。
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